ハワイ空路はなお遠く


 今年もHISの初夢フェアでコタキナバルへ行くことにした。デラックスホテル5日間、\39,000。お得な旅である。
 そして、去年と同様、ハワイ¥39,800のコースも、ものすごく悩んだ。
 最低ランクのホテルでも、ハワイならシャワーが真水じゃないとかお湯がでない、なんてこともないし、行けば必ず楽しいし、しかも安い。
 ただ、ツアーとなると、一抹の不安がよぎる。やっぱり、『あれ』がついているんだろうな。そう、ハワイツアーに行かれた方のほとんどが経験しているであろう、チェックインまでの『観光』である。

 あれは2度目のハワイ。初渡ハからすでに10年が経っていた。
 初めての時は初海外ということもあって、何もかもが珍しく、興奮しっぱなしだったので、たいして気にもとめなかったけれど、この時はさすがにまいった。
 ほぼ毎日床に臥せていた父を同行したからである。
 費用は私持ち。両親と亭主(結婚前だったから正確には彼氏か・・・)の分の旅費を負担するとなると、そう贅沢は言っていられない。
 一番安いツアーに申し込み、パスポートの準備から保険から成田までの交通手配から、全てを完了し、無事、日本を旅立った。
 ホノルルに着くと、混載バスに詰め込まれる。この日は他の便が遅れているということで、まずはパール・ハーバーへ。ようやく狭いエコノミー席から開放された上、素晴らしい天気。日本の街中じゃ見られないようなきれいな野鳥たちの姿に心が和む。
 その後、再び空港へ戻り、新たな客を乗せ、仕切りなおしで出発進行〜! 長く、不毛な、退屈極まりないオアフ島名所観光の始まりである。
 DFS、カメハメハ大王、ヌアヌ・パリ展望台。
 他にもどこか立ち寄ったような気もするけれど、あまり印象がない。要するに、たいしておもしろくもなかった、ということだ。
 一通りの『名所』をめぐり、ホノルルに着いたのは午後1時をまわっていたと思う。不慣れな飛行機であまり眠れなかった父はかなり辛そうだ。もはやパール・ハーバーで見せた笑顔は消えている。
 さて、観光が終わったからといってホテルに入れるというものではない。チェックイン時間の3時まで、恐ろしい大オリエンテーションが開かれるのである。
 連れて行かれたのはハイアット・リジェンシーのバンケット・ルーム。テーブルにはサンドウィッチのお皿とコーヒー。
 食べ終わらないうちから話のうまいおばさんが延々と滞在中の注意事項を述べ始める。 彼女は何も親切で話をしてくれているわけではない。本当の目的はお土産の大量購入とオプショナル・ツアーを申し込ませることである。
 買い物には興味ないし、オプショナルにしても父の体調を見ながら、と思っていたので私たちには関係ない話。
 早く終わってくれないかと、そそくさと皿を片付けられ、きれいになったテーブルにつっぷして悶々とするしかなかった。
 しかし、相手はプロである。聞いているうちに、もう、面倒だからここで申し込んじゃおうか、という気になってくるのである。
 今、申し込まないと後で後悔しますよーと、真剣な面差しで言われると、焦ってしまうのが悲しいかな日本人の性分。
 結局、亭主に「やめとけ」と言われ、その場は収まったのだけれど、これが大正解。泊まったホテルのツアー・デスクでは、どのオプショナルも30%〜50%は安かった。
 大説明会はみっちり2時間続いた。もう、健康な私や亭主だってぐったりである。
 幸い父は疲れただけで、大事には至らなかったけれど、金輪際、こんな時間のロスはまっぴらだ。
レンタカーでも借りてドライブでもしていた方がずっとよかった。DFSやオプショナルの催行会社からのリベートがあればこその格安ツアーなのだろうけど。

 これが教訓となり、その後のハワイは全て個人手配にした。
 挙式の時は両親の部屋だけはアーリー・チェックインを頼んだ。お金はかかるけれど、体力も神経も消耗しない。
 そんなわけで、いくら安くてもハワイのツアーだけはどうしても躊躇してしまう。
 聞いた話によると、4〜5万円代の格安ハワイツアーなんぞ、旅行会社の儲けは100円くらいにしかならないらしい。初夢フェアだって、黒字ギリギリなんだろう。こんな時にしか申し込まず、HISさん、ほんと、ごめんなさいね。



 

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