Epilogue
- マーレで熱中症 -


「今日から、メニメニ・ジャパニーズが来るよ」
ビヤドゥを発つ日の昼下がり、バーで最後のビールを飲んでいると、スタッフがちょっと困ったような表情でそう言った。
高校生の研修旅行とかで、総勢70人もの日本人がやって来るという。
高校生がモルディブ! しかも修学旅行で?(私なんか、萩・津和野だったぞ!)
なんという理不尽な世の中。モルディブとは大人のためのリゾートだと思っていたのに、箸が転んでもおかしい年頃のガキどもが数十人もいたらたまったものではない。
私たちはもう帰るからいいけれど、これからリゾート・ステイを楽しもうというゲストには、ご愁傷様としか言いようがない。本当に気の毒だ。なんでも水や電気の作り方を研究するんだと。そんなの日本の無人島でいくらでもできるだろ。

なんだか釈然としないなあと思いながらもチェックアウトの時間がやってきた。前々日、到着したばかりのダイバー・カップルやちえりさん他、スタッフに見送られてビヤドゥを後にする。
高校生がいてもいいから、もっと長く居たかったなと、だんだんと小さくなる島を見ながら楽しかった日々を反芻しているのでした。
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フルレ空港に着いたのは、まだ午後5時前。これまで訪れたボリフシ、バンドスは比較的空港から近い島であるせいか、帰りのボートは午後8時と、チェックインにちょうどよい時間だったけれど、今回、ビヤドゥを出たのは午後4時。で、飛行機は22:20発。ということは実に6時間近くももてあましてしまう。近くのホテルをデイユースして休むという手もあるけれど、時間が半端なので寝過ごしそうだし、かといってちゃちな空港なので周囲に何もない。一体、どうやって過ごせばよいというのか。
こうなったら他に選択肢はなく、マーレ観光に行くしかない。まだ足を踏み入れたことがないし、空港でうだうだしていても仕方がない。
どこからともなく日本語の上手いモルディヴィアンがやってきて、あれよあれよという間に船着場に連れて行かれる。ビヤドゥから一緒だった他の2組のカップルとともにドーニへ乗り込む。料金は片道$1。ものの10分程でマーレに到着。
さすがは世界一の人口密度を誇る首都。港にも路上にも人が溢れている。何をするわけでもなく、ただそのへんに座って話をしている様子。こういっちゃ何だけれど、皆、かなり退屈そうだ。
モスク → ← 国旗


港を離れ、先ほどのモルディヴィアン・ガイドさん(名前聞いたけど忘れた)に先導されて、名所巡り。
まずは学校。といっても門からちょっと覗くだけ。校庭でサッカーをしていた生徒たちは驚きもせず、カメラを向けるとにっこり笑って手を振ってくれる。覗かれ慣れているのだろう。

その後はマーレいち大きなモスクと由緒正しきお寺を巡って、魚市場
魚はほとんどがのよう。捌いているところを見せてもらったけれど、あまり刺身では食べたくない色だなあ。




次は食料品市場。色とりどりの果物やらお菓子が並ぶ。
ここもそそくさと通り抜け、ゆっくり見る間もありはしない。
その後、いよいよお決まりのお土産屋さん
「買わなくてもいいよ。ドリンクもタダ」
というので、遠慮なくスプライトをもらう。
この頃から、身に覚えのある症状が私を襲い始めた。
ものすごい倦怠感と身体中の火照り、そして息苦しさ。全身の毛穴という毛穴が呼吸を拒否しているかのよう。まぎれもない、熱中症だ。
土産屋を2軒まわって、
「これからどうします? 食事しますか?」
とガイドさん。まだ1時間ちょっとしか経っていない。
誰もお腹はすいていなかったので、お茶を飲むことに。私はほうほうの体で、亭主の腕につかまりながら歩くのがやっと。連れて行かれた食堂は残念ながらクーラーは効いておらず、こんなところで今ビールを飲んだらぶっ倒れるだろうと、あったかい紅茶をもらう。スリランカが近いから、さぞかしおいしいだろうと思うでしょ? でも別においしくない。普通のティーバックで、味も香りも非常に薄い。
飲み物しか頼んでいないのに、サンドウィッチやらお菓子やらが乗ったお皿が次々とテーブルに並ぶ。
「食べなければお金とらないから」
ということは、何度も出したりしまったりしているんだろうな。こんなに暑いのに。大丈夫なのか?
お茶代はガイドさんも含め、7人分でたったのUS$1。これを割り勘するのも何なので、
「じゃあ、僕が払います」
と申し出てくれたカップルのお兄さんのお言葉に甘えることにした。
ふらふらと帰りのボートに乗り込み、マーレに着いてなお、時間はたっぷりある。
とにかく涼しい場所で休もうということになり、一組のカップルと一緒に空港前のアイスクリーム屋さんへ。
中はキンキンに冷えていて、ソファはふかふかで心地よい。マンゴーのアイスクリームを食べ、しばしボケっとしているうちに、体内の熱も放出されたようで、だいぶ気分も良くなってきた。

結局2時間近くそこで粘り、ようやく集合時間。
いよいよモルディブともお別れ・・・なんだけれど、ここまで待たされると未練よりも、とっとと帰りたい気持ちが強くなってしまう。
けれども、飛行機は定刻通りだったにもかかわらず、成田上空で1時間旋回→イミグレーション大行列→リムジンバスもNEXも1時間後、と、数々の悪条件が重なって、ビヤドゥのジェティを出て我が家にたどり着くまで実に27時間という道程! 秘境に行ったわけでもあるまいし。それでもマイレージの関係で次もMASに乗るんだろうな。





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