らくだカレー



 らくだに青唐辛子をもらったのでカレーを作ることにする。らくだとは会社の同僚で、『月の砂漠』で有名な御宿の出身の娘である。御宿出身でやたら目がでかいので、らくだと呼んでいるわけで、そのらくだからもらった唐辛子を使うから、らくだカレーとなる。らくだの肉を使っているわけではない。
 私も夫もかなりの辛党だから、ひととおりのスパイスをキッチンに勢揃いさせて、毎年楽しみにこの日を待っている。
 青い唐辛子を輪切りにすると、田舎の庭の匂いがする。草と大地の匂いだ。 けれど黒胡椒につぶマスタード、ガラムマサラ等が次々に鍋に放りこまれると、残念ながらその自然の恵みに満ちた匂いも消え去ってしまう。それでも、私の舌はなかなか甘さを許さず、ついにはむせかえりそうなほどの激辛カレーが出来あがる。
 これは決して大げさな表現ではない。
 本当に辛いのだ! 汗をかきかき、ひはひは言いながら食べるカレーは最高、かというと、そうでもない。こうなると美味いも何もあったものではない。私は美味いカレーを食べたいわけではなくて、ただ単に、辛いものが食いたいのだ。
 青とうがない時は鷹の爪を代用する。それもなければ一味唐辛子の出番となる。 「もうさ、いい加減ふつーのカレーにしようよ」と、散々カレーは激辛に限ると同意していた夫にすら、三行半を下されてしまった。
 らくださん、せっかくの青唐辛子の味を生かしきれなくてごめんなさい。
 そして御宿のらくだ家では、今度はさつまいも作りを始めるそうで、来秋は是非ともお芋も下さい。
 余談だけれど、私は『月の砂漠』というのは、ずっとエジプト民謡だと思っていた。

 
 

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