* 三毛猫が消えた街角 * 



 それはそれはかわいい猫でした。我が家に出入りしていた魚屋さんが拾ってきた三毛猫は、まだ手のひらにすっぽり収まるくらいちっちゃくて、目元のアイラインくっきりの美人猫。貰い手が見つかるまで、との約束は、あまりのかわいさから立ち消えになり、メチャは、我が家の仲間入りをしたのです。当時大人気だった「まことちゃん」の飼い猫から名前をつけました。
 当時、我が家に居たのはペペと彼の妻妾であるアミとリコ。3匹とも、おっとりとした長毛種。既に成猫となった彼らはあまり物にじゃれることもなく、静かに余生を楽しんでいる、といった風情がありました。そんな中にあって、やんちゃなメチャは、まさしく私たちが久しぶりに触れ合う「猫らしい猫」だったのです。
 空いた袋を見つけては頭から突っ込み、お尻だけを出して闇雲に走りまわる、といった、猫を飼っている家庭ならよく目にしていたであろう光景も、我が家にとっては珍しく、いつもいつも笑いを振り撒いてくれました。
 思っていたより早くさかりが来ると、一日中、鳴きながら家中をうろついて、あまりの騒ぎに家族は困りはてました。じゃあ、明日にでも去勢しようか、という時です。見かねたペペが「しょうがねえな」という感じでメチャの背中に乗ったのです。
  これには皆、大爆笑。 なぜなら、ペペはその時すでに「去勢済み」だったからです。機能はなくなっても、本能で覚えていたんですね。
  冬になってこたつを出すと、必ず膝の上にメチャが乗ってきたことを思い出します。どういうわけか身体が異常に柔らかく、アクロバティックな格好で眠るメチャ。くすくす笑う私に気づくことなく、メチャはいつも幸せそうに眠っていました。
  おそらくは子供の頃に充分な栄養を摂れなかったせいでしょう。メチャはあまり大きくなることなく、他の猫より病院へ行くことも多かったと思います。そして、たったの3年でこの世を去りました。
  あまりにも愛されたから短かったのか。それとも短い命だからこそ、皆に愛されたのか。
 ともあれ、家族だけでなく、お客様や私の友人からも、めいっぱいの愛を受け、メチャは旅立ちました。ペペの死から、半年後のことです。
 最近、三毛猫が少なくなったと思いませんか? 日本猫の代表格でもある三毛猫、近い将来絶滅…なんてことないですよね。野良猫駆除なんてやってると、今にそんな日もくるかもしれないじゃないですか。 くじらにしろ何にしろ、獲るだけ獲っておいてさ、本当に絶滅の危機に瀕してからじゃないと、人間って気づかないんだよね。
  ちなみに今住んでいる街は、キジトラ:3割、茶トラ:2割、白茶又は白黒斑:2割、黒又は白:2割、三毛猫:1割、といったところでしょうか。
 元々雌しかいない三毛猫は数が少ないけれど、日本の街から三毛猫が消えてしまったら、なんだか日本じゃないみたいな気がしませんか?
 血統書つきもよいけれど、種族保存のために、野良猫さんの住み良い環境を作ってあげましょう。
 しかし最近はキジトラが多いな。うちにもいるけど。



おこたでアクロバット!


TOPHOME