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P r o f i l e ++ NENEのこと ++ |
『ネネ』はもう何年も前に天国へ逝ってしまった猫の名前です。 それは十数年前、大雨の夜のことでした。激しい雨音を縫って、猫の叫び声がかすかに耳に届きます。怪訝に思った母は、その声の主を探しに外へ出ました。 前の家の、掃除道具入れ。ネネはその狭い空間に、モップやバケツとともに閉じ込められ、捨てられていたのです。 おりしもかわいがっていた猫のメチャが死んでちょうど1ヵ月目。彼女が戻ってきたような気がして、東京のアパートでその知らせを聞いた私は、早速、胸弾ませて実家に戻りました。 ところが、まるで泥棒のように口の周りを縁取る白毛、多種多様の色が入り混じったお腹。すべて違う模様の肉球。美しい三毛猫だったメチャとは似ても似つかず、ネネは、なんともブサイクなメス猫でした。 けれども、従順で贅沢を好まず、気立ての優しいネネは、あっというまに我が家にかかせない大切な家族の一員となりました。 年に数回、私が戻ると、どこからともなく走り寄り、歓迎の出迎え。普段、気が弱く他の猫にいじめられるネネも、この時ばかりはいつものお返しとばかりに、大きな身体の猫たちに、自らけんかをふっかけていく。その豹変ぶりは、いつも家族に笑いをもたらしてくれたものでした。 でも、どんな動物も最後の時を迎えます。仲良しだったシャム猫のリズが先に逝ってしまうと、食べ物を口にしなくなり、ネネはみるみるうちにやせ細っていきました。 「たぶん、そろそろだから」 母の言葉に、何匹もの愛猫を送ってきた経験からくる確信が滲んでいます。 その週末、仕事を終えた私はすぐに実家へ戻りました。 こたつの中でひっそりと眠っているネネを起こさないように、食事を始めたのもつかの間、母がこたつを覗くと、すでにネネは息をひきとった後でした。 切ないのは私が覗いた時とは逆方向を向いていたこと。そう、ネネは帰ってきた私の声を聞き、身を起こして外へ出ようとしたところで、事切れたに違いありません。 どうしてあの時、戻ってすぐに抱いてあげなかったのか。今でも後悔が残っています。 ホームページたちあげにあたり、ハンドル・ネームは迷うことなくNENEに決めました。ここを訪れるすべての人たちに、やすらげる空間を提供することができるのなら、ネネが私たち家族に与えてくれた数えきれない楽しい思い出に、少しでも恩返しができるのではないかと思うのです。 |