-Asian Beat  vol.9-




Pantai Damai,
MALAYSIA

−ヴァカンスのあるべき姿−
 ダマイ・リゾートの朝は、遅い。 ウィークデイの疲れをとるために、街からやってきたゲストたちは、 いつもよりほんの少し長い眠りを楽しんでいる。 朝食のバッフェにも、ビーチにも、人影は少ない。
 待ちきれず、水着に着替えて部屋を飛び出すと、 サラワクいちの広さを誇るラグーン・プールには、私たちだけ。 時が止まったように静まりかえった水の中で、空を見上げる。 雲ひとつない、極上の天気。誰にも邪魔されないという至福。 神様が与えてくれた、貸切の時間……。
  けれども、何かが足りないと思うのはなぜだろう。 休息を求めて来たはずなのに、この静寂が落ち着かない。
 やがて朝寝坊のゲストがぽつりぽつりと姿を現わすと、徐々にプールサイドも 賑やかになる。 プール・バーがオープンし、子供たちが水飛沫を上げる。
 そうだった。 私は思い出す。 これがリゾートのあるべき姿。私の胸を焦がしてやまない休日の風景。
 きりっと冷えたカクテルと、人の声。
 それらが揃ってこそ、南の島の時間は動き出すのだ。



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