-Asian Beat  vol.11-




Pulau Redang, MALAYSIA

−Dear boys−


「ちょっと待ってて、フィンを持ってくるから。ベビー・シャークのポイントがあるんだ」
 シュノーケル・セットを抱えてビーチに出ると、スタッフの1人が声をかけてきた。
 一歩後を続いてビーチを歩く。パウダー・サンドが裸足に心地良い。白すぎる砂が太陽の光を受けてさらに輝き、私は手をかざして彼の背中を見つめる。
 小柄だけれど、引き締まった身体はココナッツ色の肌。ウェーブのかかった長い髪が、首筋の汗を器用に吸い取っていくのがわかる。
 胸の奥から小さな水泡がはじけるような、不思議な想いが湧き上がってくる。若い頃であれば、恋と錯覚したであろう、コントロールの効かない感情。強いて言葉に置き換えるならば、それは、感謝の気持ちに似ていた。
 私は空を仰いで天に感謝する。神がこの少年を美しい海の側に、とりわけこの島に誕生させてくれたことを。
 午後も既に遅い時間。この島の海の色が一番映える時間だ。彼の肌の色は、そんな海によく似合った。
 けれども、少年だとばかり思っていた彼は実は27歳で、結婚もしていないし、ガールフレンドさえいないんだ、と照れ臭そうに囁く。
 愛する人を抱きしめるのにふさわしい腕なのに・・・・・・。
 それとなく聞いてみると、リゾートのスタッフほとんどが独身のよう。
 こんな素敵な男たちを放っておくなんて。やっぱり神様は意地悪なのかもしれない。



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