-Asian Beat  vol.3-




Pulau Redang, MALAYSIA

−この海は誰のもの?−


 クアラルンプールから飛行機とバスを乗り継いで、最後にフェリーで1時間半。5時間以上の移動でぐったりと疲れた身体も、この海を見ればたちまち元気になる。
 写真で見るより小さなプールにがっかりする間もなく、眩しいほど透明な海に言葉を失ってしまうからだ。遠浅の海は太陽の光が溶け込んで、温かい。幸せという言葉を何のためらいもなく洩らすことができるのは、長い旅路があったからこそだ。
 ランチのビールにほろ酔いして、ひと眠りすると、すでに夕刻。7時近いというのに、空はまだまだ明るい。ここは南国なのだ。
 名残惜しくて、いつまでも砂の上に寝そべっていると、子供たちの賑やかな声が海から聞こえてきて、私の目を覚まさせる。ゲストではない。どうやら地元の子供たちのようだ。岩場ではやはり、島の女たちが貝を集めている。
 リゾート・ホテルのプライベート・ビーチでこんな光景が見れるのは、やはり素敵なことだと思う。もともとは、ここは彼らの海に違いないのだ。
 今日最後のスノーケリングをしようと、遠慮しながら海に入ると、夕飯のおかず集めに余念のないマムたちと目が合った。なんだか申し訳ない気持ちになり、うつむこうとした瞬間、とびっきりのマレー・スマイルを返してくれた。
 ああ、本当は海よりもこの笑顔が見たくて、私はこの国へ来たのだと、あらためて思い出し、せいいっぱい微笑み返す。
 大型ホテルが立ち並ぼうが、よそ者が押しかけてこようが、彼らの笑顔が変わるわけではないのだ



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