-Asian Beat  vol.4-




Pulau Redang, MALAYSIA

−ロング・グッドバイ−


 旅の終わり――なんて悲しい響き。
 午後のフェリーまであと数時間。わずかな時間を惜しんで、ビーチへ出る。
 あいにくの曇り空。だから波の音が余計にせつない。
 残り時間わずか。11時のオープンを待って、朝夕となく通いつめたビーチ・バーで最後のビールを飲む。スタッフともすっかり顔なじみになった。
「今日は、友達が皆帰ってしまうよ」
 と、チーフのエディがいくつか名前を挙げる。おそらくこの数日間、何度もこのカウンターで顔を合わせた常連たちだろう。皆、朝のフェリーで発ったという。
「君たちが午後帰ってしまったら、誰もいなくなってしまう」
 私はこみ上げてくるものをビールとともに飲みくだす。計らずとも、私たちも彼の、紛れもない『ともだち』になっていたのだ。
「今度は、いつ来る?」
「たぶん、来年」
「僕はいつでもここにいるよ」
 これが本当にラスト・ビール。飲み干して、チェックを頼む。彼はサインを求めなかった。
「最後だから、僕のおごりだよ」
 Selamat tinggal!
 彼らの新しいゲストが、どうか良い人々でありますように。



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