-West Coast Dreaming  vol.2-




Santa Monica,
California, U.S.A.

−「リバティ」という名のお酒−


 「ID?」
 また?
 カウンターを前に、私は立ちつくす。何度も繰り返された会話。
 アメリカでは21歳以下の未成年には徹底してお酒を売らない。そんなことはわかってる。 
 若く見られるのは誇らしいことなれど、行く先々で身分証明書の提示を求められるのには閉口してしまった。二十代も後半にさしかかり、お酒なしには旅のときめきも始まらない。貧弱な英語力を振り絞り、必死の抗議を続けていると、店の奥から、主がようやく顔を出す。
「わかった。君たちを信じるよ」
 ようやく冷たいビールにありつけて、カリフォルニアの太陽の下、私は幸福感を取り戻す。
 陽の光が眩しくて、額に手を翳した時、決定的な証拠を見つけた。
 してやったり。なかなか売ってくれなかったスタッフに見せつける。カレッジリングに刻まれた卒業年度が成人の証拠。苦笑いを浮かべながら、おそらく私よりもずっと若い彼は、新しいビールをテーブルに置いた。
 自由の国・アメリカ。
 その「自由」は何でもありの自由、「free」ではない。己の手で勝ち取った「Liberty」なのだ。責任を果たせないものにはその権限を決して与えない。
 その正義こそがこの国の力。私を惹きつけてやまない魅力であり続けている。



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