-Asian Beat  vol.1-




Pulau Tioman, MALAYSIA

−ビーチ・バーの誘惑−
 ハッピーアワーを告げる鐘の音が、夕刻のビーチを駆け抜ける。その音に誘われるように、水着の上にパレオを巻いただけの姿で、私はビーチ・バーへ向かう。シャワーを浴びる時間すら惜しいほど、喉が渇いていた。
 半額のビールを求めるゲストたちが、すでにカウンターを取り囲み、小さな東屋のようなバーは満員状態。それでも絶えず吹き込む潮風が汗をかき消し、これから、にぎやかなサンセットを迎える。
 太陽が、その日最後の輝きを海面に映し出す時、誰もが一様に口を噤み、名残惜しそうにそれを見届ける。それぞれの楽しかった一日を、胸の奥で反芻させているのに違いない。
 最後のひとすじの光がすっかり水平線の向こうに姿を消す頃、夕食前のシャワーのために、ゲストたちは散り散りに部屋へと戻ってゆく。 夥しい数のビア・ジョッキを洗いながら、まだ少年のようなバーテンダーが囁く。
「夜はすいているから、ディナーの後にまたおいでよ」
 そうこなくっちゃ。これだから、女同士の旅はおもしろい。



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