-Asian Beat  vol.2-




Pulau Tioman, MALAYSIA

−BGMはいらない−
 まるで少しまとまった雨が降った後の砂漠のよう。
 夜の海は引き潮で、沖に停泊したクルーズ船から、懐中電灯を片手に乗員たちがこの島へやってくる。海の上を歩いて食事をとりにくるのだ。
 その様子を眺めながらの、夕食後のお酒タイム。
 南シナ海を渡ってきた潮風がビーチ・バーを吹き抜け、リゾートを囲むジャングルへと吹き進むついでに、私の喉を渇かしてゆく。
 喉の渇きはせつなさに似ている。どちらにもお酒は必要不可欠なのだと、勝手な言い訳を考えて、私はバーテンダーが特別につくってくれた、ミントの効いた甘いカクテルを飲み干してしまう。
 おしゃべりを中断して耳を澄ますと、波の音に混じって、夜鳴き鳥の声が微かに聞こえてくる。だから、この島にはBGMはいらない。
 太陽の下で飲むビールも至福。漆黒の夜を潤すカクテルもまた至福。
 喉の渇きは、本当は幸せを味わうための準備なのかもしれない。
 やっぱり、南の島通いはやめられそうにない。



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