アイス・コーヒーはいずこ?


 頭が重い。完全なる二日酔い。初めてのニューヨーク、初めての夜。酒の安さに目がくらんで、明け方まで飲みまくってしまった。当たり前のことだけれど、喉が渇いた。のそのそと起き出して外へ出る。考えるのはただひとつのこと。
「あー、アイス・コーヒーが飲みたいっ!」
 ある人は麦茶だと言う。ある人はスポーツ・ドリンクがいいと言う。またあるマニアックな奴はC.C.レモンが最高と言う。
 二日酔いに一番おいしい飲み物とは何か。私の場合、冷たい冷たい『アイス・コーヒー』である。
 朝だというのに陽射しが強い。6月下旬とはいえ、ニューヨークは立派な夏だ。どこかにないか、アイス・コーヒー……。はっ、と気づいて私は愕然とする。かつてアメリカで『Iced Coffee』の文字を見たことがあろうか。アメリカ人があの褐色の飲み物を口にする姿を見たことがあろうか。  
 Oh, no!
 そうだ、アメリカでアイス・コーヒーなんぞ、そう簡単に見つかるはずがない。目に付くデリに片っ端から入って探してもない。なんてこったい、である。
 どうも欧米人は、コーヒーは味ではなくて香りを楽しむものと考える傾向にある、というより思いこんでいるフシがある。困りものだ。  
 仕方がないからコーラなんぞを飲む。喉を潤して元気を取り戻す。夜の酒盛りに向けて、たくさん歩いて汗を流そう。  
 雰囲気的にとてもアイス・コーヒーが似合いそうな街なのに、やはりここはアメリカ。コーラの消費料世界ナンバー1の国に他ならないのだ。


 

TOPHOMENEXT