デカデジ VS バカメラ

 今回のモルディブ旅行でおニューのデジカメを持っていくことになった。自分のものではないのだけれど、長くなるので使えることになった経緯は省略させていただく。
 これまで使っていたのはデジカメというものが世に出まわり始めた頃に買ったので、図体が大きく、重い。最近じゃ、私はこれを『デカデジ』と呼んで馬鹿にしていたのだ。
 それに比べ、おニューのカメラはとてもちっちゃくて、マシュマロのように軽い。その上画素数も多い。急なこととて、メモリー・カードの予備がなかったけれど、友人たちもカメラを持っていくというので、120枚も撮れれば十分だろう。
 愛用の旅行用バッグに入れてもちんまりとして、かさばらない。あー、ちっちゃいって素晴らしい!
 とはいえ機械音痴の私。とてもじゃないけれど短い期間で使い方をマスターできるはずがない。よって、マニュアルも持参することにした。
 ただひとつの不安といえば、これがリコール寸前とまで言われる、悪名高き機種であることだ。まあ、万が一故障したら、友人のカメラを借りればいい。購入して間もないので保証もきくし・・・・・・。
 などとのんびり構えていたのが間違いの始まりだった。
 それは、3日目の朝に突然起こった。早朝、まだゲストが席についていないレストランの中を撮ろうとした瞬間、ディスプレイが何の前触れもなく、真っ黒け。
 一度、電源を落し、再度、入れてみる。今度はレンズがうにうにと不穏な動きを見せたかと思うと、ぴたりとその動きを止めた。
 あああ・・・・・・。あの悪評は本当だったのか。いや、ちょっと待て。電池切れかもしれない。そうだ、そうに違いない。慌てて部屋に戻り、新しい電池に取替える。これでどうだ! 
 ・・・・・・。
 レンズがかすかに動いたかと思うと、再びカメラは沈黙した。私の手の中にあるのは、ただの壊れた機械になってしまった。やっぱり噂と寸分違わぬバカメラだったのだ!
 まさかと思っていたことが本当に起こってしまった。泣く泣く、あまり熱心に写真を撮るタイプではない友人のカメラを借りて、残りの日々を過ごした。これまた機種が違うので、PCに取り込むには後日、再びカメラ本体とCD-ROMを借りなければならない。
 そして、バカメラもスマートメディアではないので、治らないことにはどうしようもない。旅行記のアップもままならない。 修理に出さなければならないけれど、サービス・センターは平日は17:40までという、とんでもない早仕舞いなのだ。 ただ、不幸中の幸いにも通勤経路にある。しかたがないのでフレックスを使い、早目に会社を出て私はサービス・センターへ向かった。
 通常なら30分で修理できるのだけれど、もう終了間際なので後日送付になるという。使えないなあ、まったく。けれど保証期限内なので送料は無料になるので妥協することとした。
 故障具合を説明すると、受付のお姉さんは、ひょっとしたら、という表情で電池を替える。
 すると・・・・・・シュパッ。
 レンズが素早く首を引っ込め、電源を入れるとうぃーんと気持ちよく飛び出してきた。
 馬鹿馬鹿しい。カメラ本体ではなく、電池の問題だったのだ。ニッケル水素充電式電池なら問題はないのだそうだ。だいたい乾電池にも色々と種類があるだなんて、メカにはとんと弱い私は知る由もなかったのだ。私にとって、乾電池は乾電池だ。
 本当に忌々しい。初めから自分のデジカメを持っていけばこんな目に遭わなかったのだ。でかくてもかさばっても、使いなれているデジカメを持っていくべきだったのだ。
「デカデジの呪いだよ。旅行に持っていってくれないから」
 一連の出来事を亭主はそう締めくくった。

 デジカメの最大のメリットは素人でもそこそこきれいな写真が撮れるということだと思う。負け惜しみではなくて、あまりにも小さいと手ぶれしやすく、上手く撮れない。愛用のCAMEDIAくらいがちょうどよい。
 もう二度と裏切らない。デカデジちゃんはもう、欠かすことのできない私の旅のパートナーなのだ。これからもずっと一緒に旅をして、養老院までお付き合いしていただこうと思う。


 

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