遅すぎた決心


 だから言わんこっちゃない。最初から航空会社を指定しておけばよかったのだ。とはいえ、繁忙期のお正月休み。ついつい取れるならどこでもいい! と、簡単に妥協してしまった。
 過去2回のバリも同じ航空会社。そして、2度とも帰りは3時間のディレイ。だいたい2時間前にはチェックインを済ませるので、あの狭い空港に5時間も閉じ込められるはめになった。
 レイト・チェックアウトぎりぎりまで遊んでいたので疲れてるし、当然眠い。空港内の固いベンチで横になるも、熟睡なんぞできるはずもない。一通りのお店を覗いてしまえば、あとはすることもなくただじっと離陸の時を待つしかない。この長い長い5時間。言うまでもなく、死ぬほど退屈なのだ!
 その教訓を生かして、もう二度と乗らないぞ! と心に誓ったはずなのに、喉元過ぎればなんとやら。今回も、出発1週間前になってようやく決定した航空会社はまさにそれ、であった。
 楽しい日々は瞬く間に過ぎ、帰国の日。午後9:20発の便なのに、迎えは6時。年末で道が混んでいるだろうから、との全然ありがたくないご配慮。どーせ、遅れるのになあ、と思いつつ、私は僅かな望みを抱いていた。
 2度あることは3度ある。けれど、3度目の正直ということもある。今度こそ、定刻通り離陸するのではあるまいか、と。
 道路はガラガラに空いていて、あっという間に空港に到着。ドキドキしながら出発時刻を確認すると、21:20。
 おおー、定刻! と思ったらやはり世の中そう上手くはいかないわけで、その後ろにしっかりと刻まれた文字は『Reschedule』。 調整し直し、ということらしい。状況でいえば、どっちが最悪なんだろう。『Delay』の方がまだマシなのではないか?
 一度チェックインしてしまえば外には出れない規則なので、30分ほど待つも、事態は変わらず。仕方なくチェックインを済ませて、出発ターミナルへ。やれやれ、いつここから出られるんだろう。
 その後、何度も何度も掲示板を確認するも、目に飛び込んでくるのは『Reschedule』。あー、もうっ。遅れるなら遅れるで、はっきりしろよ! とイライラしながらひたすら待つ。待つしかないのだ。ようやく1時間遅れの離陸が決まった時には、心からほっとした。あの3時間遅れからすれば、嘘みたいな早さである。
「1時間遅れだって。冗談じゃねーよっ」
 サーファーっぽい若僧が悪態をつく横で、私は、まだまだ甘いな、こいつは、と心の中でせせら笑う。
 ああそして、ようやく離陸。帰路はジャカルタ経由だけれど、まあ、これも許そう。なんたって、1時間遅れで済んだのだから♪
 ジャカルタで一服して機内に戻ると、ニュー・イヤーを祝うべく、乗務員が派手な三角帽を被り、乗客にも同じ物を配っている。ちょうど飛び立つ頃、機内で新年を迎えるのだ。
 ところがどっこい。さすがはこの航空会社。シート・ベルトを着用して間もなく、とんでもないアナウンスが流れるのである。
「整備不良の点検のため、しばらくお待ち下さい」
 ……。
 『しばらく』って? あああ、やっぱりぬか喜び。こういうオチがしっかり待っていたというわけだ。
 サービスのシャンパン(まずい)を飲み、帽子とお揃いで貰った派手な笛みたいなやつをプープー鳴らしながら年を越し、さらに待つこと1時間。シップは、ようやく成田へ向けて飛び立ったのである。
 さて、この航空会社で唯一の利点であった喫煙席もなくなったことだし、この場を借りて、今度こそ私は誓う。
 もうもうもうもうもう二度と、ガ○ー○には乗らないぞ!!


 

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