マニュアル・アゲイン


 4年ぶりに携帯電話の機種を変更することにした。
 まだ使えるし、特に困ることもなかったけれど、今時カメラもついていないので、馬鹿にされることもしばしば。亭主が取り替えるというので、んじゃ、ついでに私も、ということになった。
 2人分交換となると出費も嵩むけれど、これでようやく猫たちを壁紙にできる。色々な機能がついていても、どうせ使いこなせないし、適当に選ぼうと思っていたら、亭主が、
「安いからこれでいいや、じゃなくって、ちゃんと新しいやつ買いなよ」
 と、私の思惑を見通して忠告する。けれど、サンプルを見たって、何が良くて、どこが優れているのか、さっぱりわからない。 結局、一番写真を撮りやすそうなタイプのものにした。
 メールの送受信と、電話の着信履歴くらいは自分で覚えるように、と、亭主からお達しを受け、仕方なく説明書を捲る。 先日、マニュアルなんて大嫌いだ! と豪語したばかりだというのに。面倒くさいなあ、もう。
 メールひとつにしたって、
「なぬ? iモードメールとデコ・メール? デコってなんだ!?」
 といった調子。 目的のページを見つけても、 『○○の機能については、XXページをご覧下さい』 そちらへ行ってみれば、 『△△については▼▼ページに詳細があります』 と、きりがないったらありゃしない。どうしてこう、複雑に作ってあるかなあ。 だいたい、こんな小さな物体に対し、説明書2冊分の機能が組み込まれているなんて、絶対に間違っている。
 さらに、送受信履歴が消えているおかげで、メールのやりとりをしていた人々のアドレスがわからなくなってしまった。そんな馬鹿な、って思うでしょ。私だってびっくりした。アドレス帳をチェックしてみたら、全然登録していなかったのである。つまり、これまでずっと受信したメールに返信を書いていただけなのである。 考えてみれば、新規メールを作成したことなんて、ほとんどない。
 仕方がないので、登録されていた友人に初メール。共通の友人のアドレスを送ってもらった。文字の入力方法はさすがに同じだろうと思ったら、濁点のキーが変わってるし、これも慣れるまで時間がかかりそう。
 カメラは意外と簡単と思いきや、撮るのは楽でもそれを壁紙に設定したり、添付して送信したり、というところまではとても覚えきれない。せっかく撮った猫の写真も結局、亭主に壁紙設定してもらった。
「なんでこんなに面倒なんだ!」
 と私がわめけば、
「なんでこんなことくらい出来ないんだ?」
 と亭主が言う。そんなこと言われても苦手なものは苦手なのだ。
 とりあえず、最低限の使い方は覚えたので、暇さえあれば、猫たちをパシャパシャと撮っている。携帯の機能も難しいけれど、猫を上手に写真に収めることは、もっと難しい。


 


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