理想の猫の探し方


 某動物関連のクイズ番組でそんなコーナーをやっていた。
 一人暮らしのアパートで、初めて猫を飼うというタレントだかアナウンサーだかにぴったりの猫を探すという趣旨で、候補に挙がったのはペルシャ、ロシアン・ブルー、ベンガル。
 成猫になったそれぞれの猫と、実験的に部屋で過ごすというもの。
 ロシアン・ブルーとベンガルは時間が経つにつれて家にも仮飼い主にも慣れ、擦り寄ってくるかわいらしい様子を見せてくれた。一人家に帰って、こんな風に甘えられたら、さぞかし心が癒されるに違いない。
 一方、マイペースでなかなか懐かないペルシャ猫。
 なんだこいつ、かわいげのない・・・と、思うかもしれない。
 一見、冷淡に思えるかもしれないけれど、その堂々とした姿を見て、私はしばし懐かしい気分に浸った。
 私の記憶の中で一番古く、それでも鮮烈に覚えている猫。
 あれは小学校に入って間もない頃だったろう。まるで毛糸玉のようなペペが我が家にやってきたのは。ふんわりとしたグレイの毛並み、黄金色の大きな目。ペペは、見事な見事なブルー・ペルシャだった。
 仔猫だった頃よりも、成長してからの思い出の方が大きい。7kg超の巨猫になったペペは、いつしか近所一帯のボス猫となり、あちこちに愛人を作り、大盛り3杯のごはんを食べては、昼夜、パトロールに出かけていくようになった。
 当時、長毛種自体が珍しく、ペペに驚いた子供たちが、
「なんだ、あれはー?!」
 と叫ぶ声もよく聞こえたものだった。
 思い返せば、ペペの方から擦り寄ってきたり、抱っこをせがまれたことは一度もない。けれど、こちらが抱っこをすると、しばらくはじっとしている。ほどなく、
「もう、満足したろ?」
 てな感じで身体をひねり、クールに腕の中から去っていく。
 人に媚びず、油断せず、それでも時折、家族の一員としての愛情だけは見せてくれる。それも、あくまでも気が向いた時だけ。
 私にとって、猫というものの定義は、完全にペペで固まってしまった。
 その後もいろんな猫を飼ったけれど、あれほど貫禄のあった猫はいない。
 もう一度ペルシャ猫を飼ってみたい気もするけれど、ブランドにゃんこは放っておいても貰い手はつくだろうから、行き場をなくして困っている猫をやはり選ぶだろう。血統書なんぞ、私にとってはチリ紙と変わらない。
 で、話は冒頭に戻って、実験の結果、クールなペルシャもお気に召したようだけれど、結局そのタレントさんはロシアン・ブルーに決めたらしい。
 ま、決まってよかったじゃないですか。せっかく猫を飼う決心をした人が数ある里親募集のサイトを見ることなく、迷わず純血種から選択するのは、ちょっと悲しいことではあるけれど。


 


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