プラムの気持


 かつて、これほどまでに堕落した休暇があっただろうか。
 今回の8日間にわたるお正月休み。
 誇張ではなく、本当に本当に、何もしなかった
 さすがに掃除だけはしたけれど、思えばこの大掃除で全ての体力を消耗してしまったようである。
 最初の3日間で掃除を終えると、たちまち腑抜けた状態に陥り、年が明け会社が始まるまで、外に出たのはたったの2回。
 近所のスーパーとセブン・イレブンの1回ずつ。どちらも食料の買い出しである。
 んじゃ、家に篭ってどんなふうに時間を過ごしていたかてえと、これまた何もしていない、としか答えようがない。
 せいぜいぼーっとTVを見たり、ネットをしたり、寝ている猫を転がしてみたり。
 あまりにも退屈なので陽の高いうちからビールをあけ、酔っ払って昼寝をし、夜、のそのそと起き出して再び飲み食いという惨憺たる有様。
 これを寝正月と言わずして、何と言えばいいのだろう。
 ごくごく当然の結果なんだけれど、体調も悪くなる。爪の先までどっぷりとアルコールが滲みこんでいる感じがする。
 だからと言って、他にすることも思いつかないのでプシュっとビールのプルリングを開ける。悪循環だ。
「あー、なんか梅酒の中の梅の気分」
 3が日も終わる頃、私は言った。
「なんだ、それ?」
 と笑っていた亭主もあくる日には
「お前が言っていた意味がわかる。たしかに梅酒の中の梅だ」
 アルコールの海の中を、あてもなく漂っているような気分。
 いくら休日だからって、毎日こんな極楽トンボのような生活をしていてよいのだろうか。
 いや、よくない。
 もう明日で休みも終わる、という時になって初めて思った。
 こんな生活は、人間として間違っている。きちんと働いてこそ、お酒はおいしいのだ。
 というのは建前で、本心を言うと、飽きてきたのだ、こんな毎日。
 満員電車や乗換駅の人込みやハンコもらいにデスクにやってくる会社の若い子たちやランチタイムが恋しくなった。 仕事が楽しいとまでは言わないけれど、まったく刺激のない生活よりも、ずっといい。
 暮れが近づくと、必ず考えることがある。
 年末といえばそう、宝くじのこと。もし1等が当たったら・・・・・・。
 すぐに会社を辞めてのんべんだらりんとした生活をしよう。毎日、好きな時間に寝て起きて、飲みたい時にビールを飲もう、と。
 けれど、そんなものは妄想の中であるからこそ楽しいに違いない。
 梅酒の中の梅でい続けるのは、心地よい反面、罪深い気分にさせられる。つまるところ、貧乏性なだけなのだ。
 まあもちろん、1等が当たったら当たったでうれしいので、神様、どうか見捨てないでね。


 


TOPHOMENEXT