はみだし者



 私は団体行動が苦手だ。一人で喫茶店に入ることが出来ないお嬢様がいるように、大勢で行動を共にする、 ということが、心底嫌いなのだ。 特に皆で一団となって何かを創り上げる/応援するなんて、考えただけでおぞましい。 そして、スポーツなんぞは元々やりもしなければ観もしないけれど、団体競技に至っては一生関わることなく過ごしたい。 あえて観戦しようと思うのは、ボクシングのタイトル・マッチとマラソンくらい。
 ここまで書けばおわかりいただけるだろうか。 私はワールド・カップなんぞ、まったくもって興味がないのである。
『横浜が、渋谷が沸いた!』『日本中が熱狂!』などと言われてもピンとこない。だって興味ないから観てないもん。
 が、正確に言うなら、さる日曜日、リビングのTVは日本VSロシア戦を映し出していた。亭主が観るからだ。裏番組の『世界衝撃映像』の方がよっぽどいいと思ったけれど、寝室に引っ込んでまで観るほどのこともないので、 その場に居た。けれど、決して『観て』はいなかった。亭主が一喜一憂しながらわめき続ける横で、私は通販のカタログを見たり、夏毛になり始めた猫にブラシをかけたり、足の裏を眺めたり(嘘)、 あくびを繰り返したり(これはほんと)しながら過ごした。
 何と言われようと興味がないものは興味がないのだ。たとえ同僚や友人との会話についていけなくても、観ていておもしろいと思えないものを観るつもりはない。
 かといって、私はあまのじゃくというわけでもない。このお祭り騒ぎに浮かれている人々を馬鹿にしたりはしない。 日々の生活を忘れさせてくれるほど、熱くなれるものがあるというのはすてきなことだ。大いに興奮して応援してストレス解消して欲しいと思う。
 おそらく私は協調性がなく、マイウェイな人間なのだろう。そんなことはずっと昔から自覚している。学生時代、体育祭のチーム対抗応援合戦なんぞも、かんべんしてくれー、という感じだった。
 仕方がないのだ。この世にはそういう人間が少なからず、いやおそらくは80%の視聴率を上げた日本VSロシア戦を観ていなかった残り20%程の人間が、絶対的に存在しているのだ。
 非国民と呼ばれようと、最後の一人になろうと、私があえてサッカーを観戦することは生涯、ないであろう。
 今後の試合も私は猫と一緒にあくびをしながらどこ吹く風。近日に迫った旅行先のガイドブックでも眺めることにしよう。
 ん、待てよ。どうしてもその日(日本VSロシア戦の日)都合がつかずに観れなかった人が10%はいるとして、私のような非国民は10%程度、ということになる・・・・・・。ま、いいか。
 ところで、オフサイドって、何?

 
 

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