人間の硬さ
「こ、これは・・・・・・」
吐息まじりの彼の声が背中にそっとのしかかる。続いて、彼は大きく息を吸いこんで、言った。
「普通の人間は、ここまで固くなりませんよ」
そうか、私は普通の人間じゃないのか。以前からそうじゃないかと、薄々感じてはいたけれど。
毎度、クイック・マッサージのお兄さんを唸らせる私は、『肩が凝っていない状態』
というものがどんなものなのか、知らない。
中学の頃からひどい凝り性で、いつも誰かに揉んでもらっていた。
以来十数年(+α)、プロをもってしてもほぐすことのできない鉄板肩の持ち主なのだ。
あらゆるグッズを試した。鍼灸にも通った。クイック・マッサージには定期的に足を運んでいる。すべては、その場限りの慰めでしかないことは、わかっているけれど。
原因はほぼ間違いなく運動不足。それに加え、冷たいもの(主にビール)を
がぶがぶと飲むからだろう。水泳でも始めようかと、いつも頭の隅にありながら、実行できずにここまできてしまった。
それにしても、と思う。 私と同じように、1日何時間もPCに向かい、ビールが大好きで、特に運動をしていない女性なんて、
たくさんいるはずなのに。
なぜだろう。なぜ私だけ、こんなにひどい肩凝りに日々悩まされているんだろう。
時々、私は妄想する。私が眠っている間に、宇宙人が、この世のものではない、何か特殊な金属を
私の肩に埋め込んでいるんじゃあないかと・・・・・・。
などと、冗談を言っている場合ではない。そろそろマッサージに行かなければ。30分\3000は経済的にもきついけれど、これがほぐれなくては仕事にならない。少しでも人間に近い柔らかさにするためには、これくらいの出費はいたしかたないのだ。
それとも美容院へ行って髪でも染めようかな。美容師さんの肩揉みって、プロ並みに気持ちいいし♪
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