いざ、衣替え



 泣いても笑っても夏は過ぎ去り、短い秋も徐々に冬へ向かいつつある。
 私の大嫌いな季節が始まる。
 つい先日までタオルケットにくるまって寝ていたけれど、一昨日の明け方、あまりの寒さに目を覚まし、羽毛布団を引っ張り出してしまった。さて、こうなったらいよいよ衣替えを覚悟しなくてはならない。
 まだ日中は暑いから、今日は疲れたからと、のらりくらりと服の入れ替えをしないまますでに10月も半ば。 この3連休こそはと、ついに昨日、重い腰をあげた。が、猫が衣装ケースの上で気持ちよさげに眠っている。
「これは不可抗力だ。困った、困った」
 と亭主に言い訳しつつ、内心ほくそえみながら断念。で、一夜明けて作業開始。
 奮闘2時間。やーっと入れ替え終了である。
 毎回、シャツ類はここ、部屋着はここ、今度こそきちんと整理して仕舞おう! と最初は思うのだけれど、だんだん面倒くさくなり、とにかく空いているところに見境なく衣類を突っ込み、無理やり蓋を閉める。だからどこに何があるのか、わかったものではない。
 私は服装には無頓着な方で、基本的に夏は暑さを凌げれば、冬はあったかけりゃいいと思っている。おまけに寝起きが悪く、朝っぱらから、
「今日は何を着て行こっかな。これにしよかな」
 などとは絶対に考えない。引出しの一番上にあるもの、クローゼットの一番取りやすいところにかかっているものを繰り返し着ている。だから今回も、この夏一度も着なかった服が、引出しの奥の方から続々姿を現した。一方、今年の4月にハワイで買ったクレイージー・シャツのチビTはしょっちゅう着たせいで、ところどころに染みが出来てしまっている。
 亭主と街へ出るとよく言われる。
「会社に着ていく服、もう少し買ったら?」
 けれど特に欲しいとも思わないので、
「んー、いいや、別に」
 で、済ましてしまう。中学・高校の時みたいに、制服があれば楽なのになー、ほんと。
 そんなわけで私の服装は何年も変わることがない。
 それでも四季を問わず、衣装ケースを丸ごと一個、陣取っている物がある。 マレーシアやバリで買ったバティック(更紗)だ。
 初訪馬以来、とりつかれたように買い捲って、今や引出しも閉まらなくなってしまった。これが活躍するのは夏の休日だけ。だから夏が好きなわけではないけれど、色とりどりのバティックを腰に巻くことが出来るのは、私の人生におけるささやかな楽しみのひとつなのだ。 そして、衣替えは掃除、裁縫と並んで人生における苦痛のひとつであることに間違いはない。



 
 

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