キッチン、恐るべし



 掃除。 その単語を聞くだけでうんざりする。とにもかくにも、私は掃除が大嫌いだ。
 女というのは大雑把に分けて2種類いると、私は考えている。料理は好きだけれど掃除・裁縫はめったにしない。一方、掃除・裁縫得意だけれど料理は苦手、という具合である。私なんぞは典型的な前者だけれど、これはかなりの確立で当たっていると思うので、周囲の女性に聞いてみて下さい。
 さて今のマンションに移って4年の歳月が過ぎ去った。今年は一念発起して大掃除をおっ始めることとなる。要らんものが堆積し、収拾がつかなくなってきたからだ。
 まずはずっと気になってはいたが手をつけずにいたキッチン。想像通り、油まみれだ。
 ガスレンジを磨き、魚グリルの窓を拭く。埃と油でべっとりの電子レンジやトースターもごしごし。流しの下のおぞましき古い油を『固めるテンプル』でやっつける。
 途中、ちょろちょろと出現するゴキブリどもを潰しながら奮闘し、ようやく一般的なきれいさにまで戻った。
 次に恐る恐る押し入れを開ける。引っ越して来てから一度も開けていない段ボール箱が積み上げられ、布団も無理矢理押し込んでいる状態をなんとかしなくては。
 ガサゴソ出し入れしているうちに、埃だらけのスキー板なんぞが姿を現した。寒いの苦手、冬は嫌いだとさんざん豪語してきた私も、一時期は学生時代の友人たちとしょっちゅうスキー旅行に行っていたことを白状しよう。もっともろくに滑らず、旅館へ戻ってからの宴会が楽しみで参加していたのだけれど。
 話は戻って、今日はこれくらいにしておこうか! と思った時に亭主が言った。
「換気扇、掃除したか?」
 何が汚いって、これほど汚れているものはないだろう。どこの家庭もそうだと思うけど、こればかりはまめに掃除できる代物ではない。キッチンの油を思い切り吸い込んだ換気扇。ファンは来週に持ち越すとして、とりあえず屋根(というのだろうか)を拭いてみる。
 盲点だった。我が家の換気扇の屋根は黒いので、汚れが目立たなかった分、最初の一拭きでぞっとしてしまった。こびりついた油に埃が蓄積し、ねっとりとしたゼリー状の膜を一面に作っている。ぞうきんではとても間に合わず、使用済みの歯ブラシでごしごし。その歯ブラシも足りなくなって、100均ショップまで買いに走るはめになった。 やはりキッチンはあなどれない。

 掃除というのはめったにやらない分、一度始めると止まらない。懐かしいものがふと出て来たり、アルバムをついつい開いてはそのまま見入って時間が経つのを忘れたりと、予定時間を大幅に過ぎてしまうものだ。
 そんなわけで、年も押し迫った今もなお、週末大掃除は続行中である。



 
 

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