夜にのしかかるもの



 重い……。そして、寒い。
 布団から肩や足がはみ出している。なんとか寝返りを打とうとするけれど、思うように身体は動かない。布団の上には総重量11kgの物体が乗っているのだ。そう簡単に動けるはずがない。
 猫を飼っている方は誰もが経験しているのだろうけど、真冬のこの時期、猫に寝床を蹂躙されるのはうれしくもあるが、正直、身体にはかなりの負担がかかる。
 猫を飼ったことのない方は、どうか想像してほしい。
 たとえば10kgの米袋。買ったはいいけれど、スーパーから家まで持って帰るにはかなりの体力がいるでしょう。そして、やっぱり5kgにしておけばよかったと、後悔したことはありませんか? あの10kg+αが、毎夜、布団の上に乗っかっているんです。
 冬の間じゅう、私は身体を小さく折り畳んで寝るしかない。普段のひどい肩凝りは、これも原因のひとつなのかと考える今日この頃。
 せめて1匹だけでも隣で眠る亭主の布団へ行ってくれないだろうか、といつも思うのだが、くっついて寝た方が、より暖をとれるのだろう、絶対に2匹ワンセットで眠っている。10日に一度くらいは亭主の布団に乗るけれど、圧倒的に私の布団に来ることが多い。亭主はそれを嘆くけれど、これは好き嫌いの問題ではなくて、単にスペース上の問題なのではないか。亭主は大柄な方で、私はチビだ。当然、私の布団の方が広い寝床を確保できる。そうでなければ、あえて寝相の悪い私の方を選びはしないだろう。
 そんなに邪魔ならどかせばいいじゃないか、と言う人もいる。けれども、気持ち良く夢の世界を彷徨っているかわいい子供たちを強引に起こしてしまおうなんて考える親がいるだろうか。それと同じで、猫たちを布団から追い出すなんて、とても出来ることではない。
 だからひたすら待つしかない。彼らが、喉が乾いて水を飲みに行くか、(そんなことはめったにないけれど)寝るのに飽きるか、それともトイレに行きたくなる時まで。
 それでも明け方になると、さすがに寒いのか、布団の中へ潜り込んでくることも多い。こちらの方が身動きが取りやすいのでありがたい。そして、暖かい。
 特に風邪をひいて熱が出た時など、猫は好んで入ってくる。こちらの身体も熱いので、猫にとってはもってこいの暖房となるのだろう。こちらとて、世の中でこれほど気持ちの良い暖房はないと思う。ふわふわで、かわいくて、いとおしい。
 要するに猫と飼い主は持ちつ持たれつの関係で、こんなふうにして生活のバランスをとっているのだ。だからいくら重くても、冬の間はじっと我慢して肩凝りと寝不足に耐えていこう、と私は決心する。
 それでも夜が来て、猫が私の布団をもみもみし始めると、どうかできるだけ端っこの方に寝ておくれと、願わずにはいられない。



 
 

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