しょうゆ大根



 先日、ご飯を炊いたらなぜか途中で保温になってしまい、もう一度スイッチを押し直すも、出来上がったのはほとんどおかゆ状態のひどい代物だった。こんなものは、リゾットかおじやにでもするしかない。けれど2人で3合分のリゾットなんぞ、食べられますか。仕方ないのでしばらく蒸らしてからすりこぎで潰し、団子汁を作った。残った団子ご飯は冷凍庫で眠っている。
 料理に失敗はつきものだけれど、こればっかりは炊飯器のせいだ。そろそろ買い換えの時期かもしれない。
 さて、料理といえば、ひとり暮らしをし始めた当初は、本当にひどいものばかりを作っていた。なにせ、家庭科の授業以外で包丁を握ったことはおろか、料理をしようなどと考えたこともなかったからだ。せいぜい生野菜サラダとそうめんくらいしかレパートリーがない。それでも『おふくろの味』が食べたくなる。
 ある日、大根の煮付けが食べたくなり、挑戦してみた。醤油の色をしているので、醤油で煮ればよいものだと思い込み、鍋に水と醤油、もちろん面取りもしていない大根を入れて煮た。当然のことながら、おそろしく不味い一品に仕上がった。
 なぜだろう。何が足りないというのだろう。
 この話を電話で母に聞かせると爆笑された。父の笑い声まで聞こえてくる。
「なんでもいいから、料理の本を一冊買いなさい!」
 そう言われて私は本屋で一冊の本を手にした。大好きな肉じゃがの作り方が載っていたからだ。
 そこには、聞いたこともない調味料の名前が並んでいた。出汁? みりん? なんだ、それ。酒? 食べ物にお酒を入れるの?
 その足でスーパーに行ってびっくり。本当に『みりん』というものが存在していたのである。計量スプーンとカップも買い揃え、私は、初めての肉じゃがを作り始めた。本の通りにおそるおそる調味料を量り、説明を忠実に守りながら作っていく。 そして、とうとう出来た! 立派な立派な肉じゃがである。
 これを機に、料理が少しづつ楽しくなっていった。そのうち計量カップも不要となり、今ではみりんも化学調味料もほとんど使わずに好みの味を出すことがる。元々食いしん坊なので、ここまでになったのだろう。
 でも、である。味には自信があるけれど、基本的に私はとっても不器用。花人参なんぞ、とても作れないし、亭主の好きなロール・キャベツに至っては、ボロボロになったキャベツをつなぎ合わせてなんとか丸めている状況である。
 それでも料理は奥深く、おもしろい。友人たちを招いて手料理を振舞うのは、旅行に次ぐ私の楽しみのひとつである。
 けれど、白状してしまうと料理以外の家事、特に裁縫は大の苦手で、ぶかぶかになったパジャマのズボンに、亭主が見兼ねてゴムを通すありさまである。感謝。
 そして、全く料理が出来なかったあの頃、セブンイレブンの『いかフライおかか弁当』にはとってもお世話になりました。感謝、感謝。



 
 

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