南の島腹事情



 私の腹は決してヤワではない。かなり辛いものも冷たい飲み物もへいちゃらである。だから海外でも、食べ物に気を遣ったことはない。少々こきたない店でも安けりゃかまわない。そんな鉄のような胃袋が、とうとう負けを認めてしまった。2度目のマレーシア旅行での出来事である。
 初日はクアラルンプールで1泊し、翌日レダン島への移動となる。旅日記でも書いたとおり、買い物の後、セントラル・マーケットの食堂で夕食をとることにした。バティックを選ぶのに夢中で、これからレストランを探すにも、ちょいと遅い時間になっていたのだ。
 きれいではないが、どんなガイドブックにも載っているショッピング・モールである。観光客が食べたら具合が悪いものはまさか、出すまい。
 実際、チョイスしたチキン・カレーはなかなかの美味。普通の人にはちょいと辛いだろうけど。変わっているのは白いご飯ではなく、具がたくさん入ったチャーハンにかけて食べるところだろう。つけあわせのピクルスは一体何者なのか、毒々しい色で、見るからに腹をこわしそうなので、パス。
 食べ終えてお決まりのコースとなるハード・ロック・カフェへ向かった。身体に変化はない。胸焼けしてるわけでもない。けれど、私の胸のうちは張り裂けそうな不安で一杯だった。明日から過ごす島での休暇にときめくことなく。虫の知らせというやつだろう。訳もなく嫌な予感がしていたのだ。
 で、世間一般的にヤな予感というのは的中するもので、レダンで過ごした4日間は、ずーーーっと下痢状態だった。トイレから帰ると、すぐにまた行きたくなる。その繰り返しだ。でも腹が痛いわけでなく、気持ち悪くもないので、いつもよりはずっと量は少ないけれどしっかりお酒はいただく。こういう時に限っていつもたっぷり持ってくるはずの胃薬が少ない。だから延々と悪循環が続いた。
 同じカレーを食べた友人が言うところによると、例のカレーの中には「これって、食べれるものなのか?」と首を傾げるようなブツが結構入っていたらしい。そういえばたくさん残していたっけ。それらを避けて食べた彼女は私とは対照的に、絶好調に飲みまくっていた。
 この旅の教訓。初日の食事はマックあたりにしておこう。

 
 

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