さよならチェリー・ブラッサム



 君と過ごせた春だけは、お酒なんか必要なかった。
 残酷なほどゆっくりと過ぎてゆく夜の時間も、 君がいたから、微笑んでいられた。
 薄い、薄い、限りなく白に近いピンクの衣装を纏った君は、 赤ちゃんのように清潔で、そう、本物の“天使”に見えたんだ。
 君の香りは春そのもの。心地良く鼻腔をくすぐり、唇に余韻を残す。

「もう、冬は終わったんだよ」

 そんな君の囁きが身体中に染みわたる。 そうだったね。 長く辛い冬は、終わったんだね。
 ああ、君は春の精。どんなに待ち焦がれていたことか。 この、めくるめくような、新しい季節を・・・・・・。
 けれど、3年目の春、君は姿を消した。 街中を走り回って君を探したけれど、もう、君はいないんだね。 そしてまた、切ない春がやってくる。君のいない、目覚めの季節・・・・・・。
 春って、こんなに切ないものだったっけ?
  どんなに叫んでも戻らない、あれは、過ぎ去ってしまった、幻の春・・・・・・。
 
 おおーい、どこ行っちゃったんだよー!!  『桜緑茶』さーん!!!!!

 
 

Back Number IndexHOMENEXT