ニューフェイス爛漫♪



 のってる、のってる。スーツの上に顔がのってるぅ〜!!
  4月は心踊る季節である。いつもの通勤電車も気のせいか活気づき、明るい雰囲気が漂っているように思えるのは、ニューフェイス、新入生・新社会人の希望に満ちたオーラのせいだろう。
  毎年、私はこの時期を楽しみに待っている。一目で新入社員とわかる男の子達を見るのがおもしろいのだ。別に馬鹿にしているわけではない。ただ単純に楽しいだけ。
 小学生の頃、フォルックス・ワーゲン・ビートルを1日に5台見ると願いがかなう、といった話が大流行したことがある。ビートル自体が流行っていた時期だったから、そんな噂がたったのだろう。たまに車に乗ると、目を凝らして反対車線を見つめ、ビートルの姿を探した。見つけた時のうれしさったら……。その時の気持ちに似ているのだ。根拠は何もないんだけれど。
 女の子もそれなりに見分けがつくけれど、男の子の比ではない。まだ学生っぽさの抜けていない顔とスーツのアンバランスさ。ぴかぴかの靴。そして何より、上気した頬の色である。新人君たちを見かけるたびに、私は心の中でエールを送る。がんばれ、ニューフェイス! と。
  けれど不思議なことに4月も半ばにさしかかると、あの、一目でそれとわかったニューフェイスたちの姿を見かけなくなる。
 彼らはどこへ行ってしまったのだろう。
 もちろん、消えてしまったわけではない。スーツが身体に馴染み始め、入社前にはきらきら輝いていた希望の光が現実という壁に遮られると、一人の、どこにでもいる社会人として、世間に紛れて見分けがつかなくなってしまうのだ。
 想像していた社会人生活とはかけ離れたことが多々あるかもしれない。現実社会はあまりにも厳しい場所だけれど、就職難のこの時代、ネクタイを絞めることができるだけでも幸運と思おう。会社は人生の勉強の場。お金をもらって勉強しているんだ、と考えよう。
  そういえば、ぼちぼち研修を終えた小田急の新人さんたちが、改札に立って朝の挨拶をする時期だなあ。一列に並んで、はきはきとした声で「おはようございますっ」と、礼儀正しく頭を下げる。これも微笑ましい、春ならではの光景だろう。
 がんばれっ、ニューフェイス!

 
 

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