夏はどこへ行ったの



 誰にぶつけていいかわからない憤りというのは、厄介なものだ。もやもやした気分をもてあまし、 時には怒りにも近い感情に押し潰されそうになることしばしば。今年は、そんな夏だった。
 いや、夏というにはあまりにも活気がなく、うら寂しく、もどかしい日々だったではないか。
 部屋を通り過ぎるはずの熱風や、アスファルトの道路から立ち上る陽炎は、一体、どこへ行ってしまったのだろう。待って待って待ち続けた大好きな季節がこんな風に終りを告げるなんて、あんまりじゃないか。
 毎年、夏の休日に活躍するバティック地のサロンも、今回はほとんど出番なし。明日には暑くなる、来週こそ太陽が戻ってくる。そう信じ続けたこの2ヵ月。どうやら私の祈りは天まで届かなかったようである。だいいち、お盆の最中だというのに寒さに震えるなんて、考えてもみなかった。まったく、夏はどこへ消えてしまったのだ?
「夏を返せ!」と叫び声のひとつでもあげたいところだ。
 まあ、どなったところでどうなるものでもないし、秋の足音は着実に近づいている。
 ああ、そして私の大嫌いな冬がやってきて、長いことこの地上に君臨するのだ。考えるだけで憂鬱になる。 泣いても笑っても現状は変わらない。今年の夏はおあずけ、来年を待つしかない。
 それにしても、私には次の年があるけれど、今年孵化した蝉たちはかわいそうに。せっかく夏を盛り上げる為(?)に土の中から目覚めたものの、こう寒くちゃ、やってられないだろう。本当に気の毒だ。
 これから野菜も米も高くなるだろうし、ロクなものではない。
 やっぱり一度、思いきり叫びたい。
「私の夏を返せーーーー!!」



 

TOPHOMENEXT