ザ・リフォーム〜何がどこだかおまけに痒いし



 キッチンとリビングの間に穴があけられ、ずっと欲しかったカウンターが出来あがった。
 フローリングも全て張り替えられ、家の鍵を返してもらい、これでようやくリフォームは終了である。
 新しい床は前のものよりずっと明るい色。おまけにカウンターが出来たおかげで部屋の中はずっと日当たりも風通しもよくなった。 ・・・・・・のはいいのだけれど、その分、壁紙の汚さが異様に目立つ。長い月日の煙草のヤニがこびりついているのだ。 家具を移動するとそこだけぽっかりと白くて、みっともないったらありゃしない。 洗剤を買ってきて拭いてはみても、なかなか落ちない。困ったものだ。これも張り替えればよかったなあと、途中で何度も思ったのだけれど、 こればかりは煙草をやめてからにしよう、ということになった。そう、実は二人ともまだやめられていない。ノン・スモーカーへの道は厳しいのだ。
 さてさて、ほぼ2週間のリフォームはひたすら不便を強いられた日々だった。 細かいものは後からとにかく開いている箱や引出しに突っ込んだものだから、何がどこにあるのかさっぱりわからない。 綿棒はどこだ、せんたくばさみはどこだ、しょうゆは? 振り込み用紙は? と毎日「?」の連続だった。
 その間、普段、ウォークイン・クローゼット兼客間として使っている部屋をリビング代わりにしていたわけだけれど、この部屋、どうやらダニがいるらしく、一夜明けると身体中のあちこちに赤い斑点がポツポツとお目見えしてしまった。 丹念に掃除機をかけたら少しはましになったけれど、これにはまいってしまった。これまでこの部屋に泊まった友人達は大丈夫だったのだろか?
 それはさておき、週末、荷物を全て元に戻して、ようやく普通の生活が送れるまでになった。
 せっかくきれいになったのだから、あれも買いたい、こんなものを揃えたいと、欲を言えばきりがない。 特に私が忌々しく思っているのは玄関の傘立てである。引出タイプの衣装ケースと言えばおわかりいただけるだろうか。 あの中身を猫のトイレとして使っているのだけれど、我が家の傘立てはその外側なのである。 捨てるもがもったいないからという亭主に押しきられて傘立てになってしまっている。 気づく人はあまりいないのだけれど、決してかっこいいものではない。 こればかりは捨てて、新しいのを買うことにした。
 けれども、駅前のショッピング・センターをうろつき、通販のカタログを見、探しているのだけれどなかなか気に入ったものが見つからない。まあそれもとにかく部屋が落ち着いてから、ということになった。 結局、私が買ったのはリフォーム終了記念で食べようと話していた、新しいすき焼き鍋ひとつだけだ。
  新しくなったリビングで初めての夕食である。今回だけは外国産の切り落とし肉ではなく、立派な和牛のお肉を用意した。
 労働の後のビールは美味い。なかなか買う勇気のない高級肉も美味い。 2週間、不便で痒い生活を我慢した、これがささやかなご褒美なのである。
 新しい床では猫が忙しそうに匂いつけをしている。狭い一室で恐怖に怯えていた猫たちには、お疲れ様のマタタビを。これは最高のご褒美である。



 


 
憧れだったキッチン・カウンター。
壁が汚いなあ・・・

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