青春のJEWEL



 私は連続ドラマというものを殆ど観ないので、話の内容は知らないけれど、キ○タク主演のそのドラマの主題歌は、ああ、紛れもなく我が青春の、フレディ・マーキュリーの美声ではないか。
 クイーンが残した数々の名曲はこれまでもCMやら何やらで使われてきた。が、とうとうこんなミーハーなドラマにまで登場してしまったわけである。
 高視聴率が約束された人気タレントの最新ドラマ。その人気にあやかってこの度、クイーンのベストCDが発売されることとなったそうだ。
 いいじゃないか。良い音楽は次の世代にまで聴き継がれるべきだ、という気持ちの反面、今の薄っぺらいポップスと同じ土俵に並べて欲しくない、とも思う。ブームが過ぎれば中古屋に売り飛ばして、新曲に目移りしてしまうような軽い考えで彼らの音に触れて欲しくないのだ。
 言いかえるなら、心の奥に今でも大切にしまってある少女時代の宝物を、弄ばないでくれっ! といったところだろうか。
 ひねくれている、と思われるかもしれない。けれど私と同年代で、彼らの音楽と共に早春時代を過ごし、今もあの美しい旋律が心の中で響き続けている、という人々ならば、少しくらいはこんな気持ちになっているんじゃないかとも思う。要は、人気が上がれば上がるほど遠い存在になっていくような気がして、淋しいだけなのだ。これはほとんど中学生みたいな発想だ。
 もっともフレディ・マーキュリーはずっと遠いところに行ってしまったわけだけれど、今のこの人気ぶりを当のフレディは、天国からどんな気持ちで見ているのだろう。
 大好きだった日本で、在りし日のファンの子供世代が自分の曲に耳を傾ける姿。それはさぞかし素晴らしい光景であろう。私が複雑な気持ちになったところで、本当に良い音楽というものはいつまでも世に残るのだ。

 私の手元には、真っ黒になった『オペラ座の夜』のLPがある。ご存知、クイーンのアルバムの中でもダントツの売上を記録し、かの名曲『ボヘミアン・ラプソディ』が収録された1枚だ。あまりにも聴きすぎて、純白のジャケットは手垢で黒く染まり、あちこちに傷が出来、途中で針もぶっ飛んでしまう。こればかりはさすがにCDで買い直した。ベスト盤を手にした若者たちも、どうせ聴くなら、これくらいとことん聴いて欲しいものだ。それだけ価値のあるアーチストなのだから。
 ところで、このCD発売のニュースは朝のバラエティ番組で知った。その際、懐かしい映像、見たこともない初来日の時の姿が流れ、思わず黄色い声をあげそうになった。結局、自分もちゃっかりとこの人気にあやかっているのである。
 CDのタイトルは『JEWELS』。
 少女の頃、ドキドキと胸を弾ませながら聴いた曲の数々は、いつまでたっても、どんな宝石よりも美しく輝いている。



 


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