東京駅で見てた



『東宝特撮映画とゴジラの半世紀展』とやらを見る為に、大丸デパートまで行ってきた。当然のことながら、東京駅構内を通るわけで、さすがGWの真っ只中。ものすごい人で溢れている。皆、一様に大きな荷物。海外へ行くのであろう、トランク・ケースを引き摺る人も少なくない。
 ちぇっ、いいなあ。と思わず悪態をつきたくなる。
 GW後半、旅行代金はぐっと安くなるので、有休をとってセブあたり行こうかなー、と目論んでいたのだけれど、どうしても休めない仕事が入り、泣く泣く諦めざるを得なくなってしまったので、余計にせつない。
 モルディブに行ったばかりなんだから、いいじゃあないか、と言われれればそれまでなのだけれど、うらやましいものはうらやましい。
 私の実家は何度も書いたけれど民宿を経営していたため、盆・暮正月はもちろん、GW、そして普通の週末さえ、どこへも連れて行ってもらえなかった。子供の頃の「家族旅行」の記憶なんぞ、全くない。働き始めてからもそんな状況は変わらなかった。
 事情があって、一時期、繁忙期には実家へ帰り、手伝いをするのが常になっていた。周囲がやれ海だ、ハワイだ、温泉だ! と、ほくほく顔を上気させている横で、私は帰省の準備を始めていたのだ。それも、休暇で帰るわけではない。
 だからこそ、商売も廃業してしまった今、自由の身となった私は「旅」に夢中なわけである。ここ数年、正月は海外へ脱出しているのも、そんな日々の反動かもしれない。いいじゃあないか。さんざん人様が遊んでいる中、働いていたんだから。
 そんな私もなぜかGWに旅行へ行ったことはない。亭主の仕事の都合上、うまく連休がとれず、毎年カレンダー通り、休日は家でごろごろ、平日は普通に会社へ行っていたわけである。
 今年も然り。例年のごとく、特に予定もなく、ぐうたらな休日を過ごす中、1日だけ重い腰をあげ、ゴジラに会いに出かけたのだ。旅の高揚感溢れる東京駅の人ごみの中、ただ「ゴジラ」を見るために大丸へ向かう自分が、段々情けなくなってくる。(関係ないけど、タイトルは夏樹静子さんの小説『東京駅で消えた』を真似っこしただけのもの)。
 しかれども、ゴジラ展は小規模ながら、なかなかおもしろかった。これまでの作品の予告編だけを編集したダイジェスト版が放映されていたりして、今年で最後となるゴジラを惜しむファンにとってはせつなく、そしてうれしい企画だ。
 街へ戻り、どうせ暇な日が続くので、何本か映画を借りようとレンタル・ビデオ店に入る。暇人は結構いるようで、店内は思ったより賑わっている。私たちだけじゃないんだなーと、妙に親近感が沸いてしまう。それでも帰り道、トランクをガラガラさせて駅へと急ぐ人にすれ違ったりすると、つい悪態をつきたくなる。
 ちぇっ、いいなー!



 


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