フライング・スリッパーズ
家に帰るとストッキングを脱いで、真冬でもそのまま素足で過ごす、という友人がいる。
信じられない。
私はというと、真夏以外は必ず家の中でも靴下を履いている。冷え症というほどではないけれど、足先がすぐに冷たくなるので、裸足なんて耐えられない。
我が家はスリッパを履いて動き回るほど広くないので、来客用のものも用意していない。
けれどもフローリングの床は、靴下を履いていても冬場はさすがに寒いので、キッチンに立つ時だけ、もこもこのスリッパを履いている。
『ぼのぼの』に出てくるフェネック・ギツネの顔がついたスリッパで、亭主が昔、UFOキャッチャーで獲ったものである。
通称、フェネちゃん。
フェネちゃんは私のスリッパでありながら、猫のルーのおもちゃである。というより、おもちゃにされてしまったのだ。
ルーはなぜかこのフェネちゃんが大好きで、しょっちゅうちょっかいを出している。その遊び方は半端ではなく、タイトル通り、フェネちゃんが空中を舞うほどである。
さて、スリッパといえば、私は飛行機に乗る際、必ず機内用スリッパに履き替えている。アメリカで買った、バレエ・シューズのような形のもので、折り畳めるしかさばらないし、丸ごとジャブジャブ洗えるので、重宝している。
夏は裸足にサンダルで搭乗するけれど、そんな時にはもちろん、靴下もお持込み。
長いフライト、狭いエコノミー。足がむくまないはずはないのに、周りを見ると、履きかえる人は少数のようである。目的地に着くまでずっとスニーカーを履いたまま、という人もかなり多い。
これまた信じられない。
航空会社によってはアイマスクやらと一緒にスリッパをくれるとこもあるけれど、私の経験からすると、過去数十回のフライトでほんの2回しかない。
安くはないお金を払って乗っているんだから、それくらいサービスしたっていいじゃないかといつも思う。
でも思ったところで盆に乗って出てくるわけではないので、毎度、スリッパ&靴下セットを旅のお供としているわけである。
たかがスリッパでも、私にとってはパスポートと同じくらい重要なものなのだ。
ところで、日々、ルーに投げ飛ばされ続けているフェネちゃんは、ついに鼻がもげてしまった。あちこちに穴が開き、悲惨な末路に向かいつつある。
でもまだもう少し履けそうなので、かわいそうなフェネちゃんは今日も家の片隅で、ルーの攻撃に怯えている
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