妖怪ウズメガオ、参上!



 【ウズメガオ(名)】
 埋め甲斐のあるふかふかの動物のお腹を探し求める妖怪。

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 休日の昼下がり、ベッドの上には太陽の光射す中、猫たちが気持良さそうに眠っている。 私はこっそりと近づいて、猫の横に腰を下ろす。 まずは背中を撫でて油断させる。
 ゴロゴロと喉を鳴らしながら四肢を伸ばした瞬間、そっと手足をつかみ、仰向けにさせる。そして、すかさず、ばふぉっ!
 ふかふかの毛溜まりに顔を押し付ける。ああ、この至福の時!

 動物を飼ったことのある方ならば、一度は彼らのお腹にばふぉーと顔を埋めたことがあるに違いない。犬でも鳥でもハムスターでもいい。動物のお腹は柔らかくてふわふわで、本当に気持が良い。あんなに心暖まる時間があるだろうか。
 けれど気まぐれな猫のこと。最初のうちはじっとしているものの、すぐに我慢できなくなり、猫キックをくらわせて、身を翻し、逃げてしまう。
 タイトルの妖怪・ウズメガオは購読しているコミック雑誌で連載中の漫画に登場した架空の妖怪である。この漫画は毎週、へんてこりんな妖怪が登場し、霊感の強い少年がやっつけるというのがテーマのホラー・コミックである。
 少年の飼い犬をさらい、棲み家へと連れてゆく。追ってきた少年がそこで見たのは、世の中のありとあらゆる『ふかふかのお腹』を持つ動物たちだった。 動物達は気の毒だけれど、なんともうらやましい。四方をふかふか腹に囲まれて暮せるなんて、すてきだ。
 でも我が家にはふかふかがいつでも2つ、側にある。
 最近は、
「妖怪・ウズメガオ、参上!」
 と、宣言してからばふぉーっとすることにしている。
 愛する息子たちのお腹。もちろんお腹だけではなく、ぷにぷにの肉球も、短い尻尾も、そしてお○りの穴までいとおしい。
 なんだかんだと、親馬鹿の話になってしまったけれど、動物を愛する誰の心にも、妖怪・ウズメガオは潜んでいるのだ。


 


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