専業主婦シミュレーション



 年に一度のワクチンへ連れて行った翌日から、猫たちの様子がおかしくなった。
 普段、寝ないような場所でうずくまり、ご飯も食べない、トイレも行かない。注射の後で身体がだるく、眠いのだろうとは思ったけれど、こんなことは初めてなので、ほったらかしにしておくわけにもいかない。結局、私が会社を休んで、一日様子を見ることにした。
 8時過ぎに亭主が出かけた後、食器を洗い、洗濯物を洗濯機に放り込んでしまうと、これといってすることもない。猫が嫌いな掃除機をかけるわけにもいかない。
 そんなわけで、早い時間から暇を持て余してしまった。
 しかたがないので、朝のワイドショウをぼーっと見ていたのだけど、くだらなすぎてすぐに飽きてしまう (ブラザー・トムさんの『都会に潜む野生動物』レポートは結構おもしろかった)。
 一体、世の子供のいない専業主婦の皆さんは、何をして過ごしているのだろう。
 ゴロゴロしていてもしょうがないので、猫が寝ているうちに買い物に行く。
 スーパーも普段とはがらっと雰囲気が違う。子供連れの奥様かご隠居ばかり。いつも行くのは会社帰りなので、午後8時前後。客層はやはりOLっぽいお姉さんやパート帰りのおばさん、単身赴任らしきサラリーマンのおじさんが殆どで、要る物だけをぱっぱと籠に放り込んでいく。
 その光景に慣れているので、昼間のスーパーはなんとも和やかな雰囲気に感じる。
 せっかく時間があるのだから、面倒な料理を作ってみよう、ということで、夕飯のおかずはクリーム・コロッケ。カニなんぞあるはずもないので、ツナ缶と冷凍庫でかちかちに凍っていたコーンを使って。
 仕込みが終わってしまうと、これまたすることがない。陽が落ちるまで、まだまだ時間がありそうだ。
 寝転びながら本を読み、一時間ほど、うとうと。そのうち猫たちも調子が戻ってきたのか、起きてちょこまかと動き出し、ようやく安心する。
 こんな風にゆったりしたウィークデイもたまにはいいなあ、と思いつつも、具合が悪いわけでもないのに会社を休んでいるので、なんとなく後ろめたい気分になる。貧乏性の特性だろう。
 一日くらいならいいけれど、本当に専業主婦になったなら、私はどんな生活を送るのだろう。
 料理以外の家事は嫌いだし、信じられないくらい手先が不器用だし、旅行以外、これといって興味もない。
 神様が、向上心もなく怠け者の私にきちんとフルタイムの仕事を与えてくれている理由がわかった気がする。
 もし私が専業主婦になったなら、間違いなく、暇を持て余して真昼間からビールを飲むに違いない。キッチン・ドリンカーの道一直線だろう。
 ということで、まだまだOL主婦の生活が続くんだろうなあ、はあ


 


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