女たちのサンクチュアリ



 ずっと以前から疑問に思い続けていることがある。人間として、女としての素朴な疑問である。
 なぜ、女というのはこんなにトイレが長いんだ!?
 ドアを開ける→パンツ(&ストッキング)を下げる→座る→用を足す→拭く→パンツを上げる→流す。
 たったこれだけの行為を行うのに、どうして10分も20分もかかるのだろう?
 よほど頑固な便秘なんだろうと、普通は考える。でも長いこと観察してきた私の考察からすると、トイレの長い人はう○こじゃなくとも、長い時間個室を占有しているのが常だ。 長い人は長いのだ。
 いつもトイレで困ったのが、スキー帰りのパーキング・エリアである。 冬だから身体も冷える。必然的に、誰もがトイレに立ち寄る確率も増える。今は一列に並んで、開いた所から順に入っていくようになったけれど、少し前までは、個室の前にそれぞれ列を作っていた。
 これは、はっきり言って博打みたいなものである。前に並んでいる人々のトイレ滞在時間によって、待ち時間に恐ろしいほど差がつくのだ。 どういうわけか私が並ぶ列はたいてい『はずれ』で、いらいらしながらじっとドアを見つめていたものである。
 一度、やはりトイレの長い友人に、一体、中で何をしているのかと聞いてみたことがある。すると、あきれたことに、中で化粧直しをしたり、髪を整えたり、考え事をしたりしているんだそうだ。外で人が待っている、という事実がなぜ認識できない?
 それよりも、何も臭い所で化粧直しをする必要なんぞ、全くないではないか。 こればかりは理解できない女の生態のひとつである。
 そして、個室はもちろんのこと、洗面台ともなると、これまた長い。 歯磨きに化粧直しくらいならまあ、仕方がないとしても、どこにでもいるのだ。トイレで長々お喋りに興じる女どもが・・・・・・。
 会社のトイレに座る私。女性が多く、1フロアに100人近い女性がいるのに、個室はたったの3つで、トイレはとても狭い。
 洗面台で、化粧直しが終わったにもかかわらず延々としゃべり続ける女たち。
 うるさい。落ち着かない。出るものも出やしない。
 ここは排泄する場所なのだ! お喋りなら、昼休みにしろ!
 心の中で叫びながら、私はトイレに腰を降ろしたまた悶々とする。彼女たちの話し声が、足音と共に遠ざかるまで。
 でも、思えば若い頃にはそんなことがなくもなかった(隠れタバコとかね)。腹は立つけれど、会社の女子トイレというものはOLたちの愚痴の吐き所として長い歴史刻んできたのだ。トイレだけが、駆け込み寺であり、オアシスだったのだ。 あまりガミガミ言うと煙たがられる歳になったことだし、このあたりでやめておこう。 トイレは女たちにとって、永遠の聖地なのである。


 


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