兵どもの夢の続き
20代半ばまで、特に学生時代は片っ端から来日するミュージシャンのライブへ足を運んでいた。当時は音楽が生活の基盤であり、身体の一部でもあった。
特にきっかけなどなかったと思うのだけれど、いつのまにやら、ぱったりと行かなくなってしまった。家でレコードを聴く時間すら、日々、少なくなっていき、コンポが壊れてもほったらかしにすること数年。世はレコードからCDの時代へと移り変わり、本屋で気まぐれに手に取った音楽雑誌で、かつて一世を風靡したロック・スターの死を知り、呆然とする始末。
やっぱりトシなんだなあ、と言葉で言うのは簡単だけれど、それを認めてしまうのはなんとも淋しい。それでも何か聴こう、新しいこのバンドはどうだろう、などとわくわくすることなどないのは、紛れもない事実なのだ。
どれほど素晴らしいバンドであっても、若い頃と同じような感動は味わえない。
「あー、かっこいいじゃん」
と、ここで終わってしまうのだ。ほれ、やっぱりトシなんですよ、トシ。
さて、レコードが擦り切れるまで聴いて覚えた、でたらめな英語の歌詞を口ずさむのがせいぜいのここ数年だったけれど、どういうわけか、往年のミュージシャンたちが次々に『復活』し、ツアーなんぞを行っている。新たに夢中になれる音を探すのは難しいことなれど、昔懐かしいロックン・ロールをライヴで聴けるとなれば話は別だ。
友人にチケットを譲ってもらい、昨夜はヨーロッパのライブへ行ってきた。特別好きなバンドではなかったけれど、青春時代を飾った音楽のひとつには違いない。実を言うと1986年の初来日公演もちゃっかり鑑賞しているのだ。
ろくに曲も覚えていなかったけれど、ライブが進むにつれて、
「あー、この曲、知ってる」
「そうそう、ヨーロッパの曲だったっけなあ、これ」
と、若く自由な日々と音楽が重なり、しばし懐かしい気分に浸る。
一緒に観ていた子(友人の友人)がオペラグラスを手渡してくれたので、覗いてみると・・・・・・。
いやー、皆、りっぱなおっさんになっちゃって。白馬の王子かと見紛うばかりの美しい青年だったジョーイ・テンペストも今や『すてきなおじさま』である(でもやっぱりかっこいい)。
ところでライブの行われた東京国際フォーラムAホールの収容人数は5000人ほど。10年以上活動を中止していたバンドがこれだけの集客をとれるのだから、才能のあるミュージシャンというのはやっぱり違うんだなあ。観客席には会社帰りのサラリーマン(私もだ)のスーツ姿もちらほら。
でも昔のライブといえば、観る側にとってもファッション・ショーのようなもので、これでもかとばかりに派手な格好&厚化粧のねーちゃん、にーさんが会場の外に溢れていたものだった。今のライブ会場を見ていると、夏草や、兵どもが・・・と、しんみりと一句詠みたい気分になってくる。
まあ、服装はともかく、懐かしいバンドの再結成はありがたいもの。どんどん来日して欲しいものである。
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