ふらふら荷造り



 もっと早くやっておけばよかった、と思っても後の祭り。荷造りは慣れたものだけれど、今回の場合、これまで使っていたキャスター付バッグを母に返してしまったので、まずは鞄を買うことから始まった。
 大きなトランクは持っているけれど、一人旅3泊5日にはいかにも大き過ぎるし、重過ぎる。駅前のデパートで以前から目をつけていた布製の軽い物を買う。これが出発1週間前のこと。日曜日を待って、ようやく荷造りにとりかかれた。
 サロンにパレオ、シャツ、下着、薬に化粧品、洗面道具と目覚まし時計、そして水着。
 他にないか? 忘れているものはないか。まあ、あったとしてもハワイである。たいていのものは現地で買えるし、 深く考えないことにしよう。
 さて、遺骨である。既に母が粉状に砕いておいてくれたので、持っていくだけの状態になっているのだけれど、 これが結構重い。かといってパンツと一緒に詰めるわけにもいかないので、こればっかりは手持ちすることに決めていた。
 愛用のショルダー・バッグに入らないことはないけれど、遺灰を入れてしまうと他のものが一切入らない。 仕方がないので大きめのリュックで担いでいくことにした。成田では何度もパスポートを出し入れするので、リュックだとかなり面倒なのだけれど、いたしかたない。ジップロックで二重に密閉し、更紗の余り布で作った巾着に入れる。 これでほぼ完了。けれど、出発当日は会社から直接成田に向かう予定である。宅配便を手配し、引き取りはマンションの管理人さんにお願いすることにした。
 旅支度というものは、何度やっても、直前になっても、「あ、あれ入れるの忘れた」というものが後から出てくるものである。案の定、本やらサングラスやら、毎日、何かしら思い出しては詰め込んでいた。
 物なら、まだいい。残された問題は到着日にお願いした車のチャーターである。これがぎりぎりまで返事が来ず、私は途方にくれていた。毎日、帰宅してはメールをチェックする。それはいいのだけれど、この週に限って普段は暇な私に色々と予定が詰まっており、仕事も多忙。特に出発日の前日、前々日は辛かった。 なぜなら、2夜連続でKISSの武道館ライブへ出かけ、その後で一杯飲み、午前様に帰宅していたからだ。 自業自得と言うわれればそれまでなんだけど。
 結局、出発前夜(すでに12時を回っていたので当日なんだけど)に返事をもらい、プリントアウトして、あー、これでやっと完了。何やかやで、最後の最後までふらふらになりながら荷造りをしていた。エアやホテルの手配よりもてこずってしまった。別にハワイだからフラとかけて『ふらふら』などと冗談を言っているのではないのである。
 ようやく、ほっ。けれど、大音響のロック・コンサートの後なので、まだ耳鳴りがしている。こんな状態で飛行機乗って大丈夫かしらんと、新しい不安が胸に沸いてくるのでした。



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