ハラハラ荷物検査〜成田編
というわけで、ふらふらと成田にようやく辿り着いたのは離陸2時間半前。もう一本遅い電車でも間に合うのだけれど、何事も余裕を持っていないと気が済まない性分なのでこの時間となった。こういう時の暇つぶしにはいつも悩まされている。
とりあえずは宅配便で送った荷物を受けとって、チェック・イン。春休み前とあって、チェックイン・カウンターもガラガラで、あっという間に終わってしまう。
これが済めばもう出国まですることはない。
さて、どうしたものか。
ひとまず出国ロビーの椅子に腰を下ろし、ぼけーっとする。今、何時だ? 携帯電話で時間を確認して、はっとした。
まただ。去年4月のハワイ行きとまったく同じことを私は繰り返している! 腕時計を忘れてきたのだ!
(このあたりはDad's Cafeの『機械音痴はほどほどに』をご参照下さい)
なんたるちや・・・・・・。今回はちゃんとハワイの時刻に予め合わせたものを用意しておいたのに。しっかり家に置いてきてしまった。
仕方がない。前回と同じ店で適当な時計を探すことにする。今度はデジタルではなく、自分で時間を調整できるアナログタイプのものにした。
\1,980也。
小腹がすいたので、マクドナルドでチーズバーガーを食べ(後で気づいたんだけど、何もハンバーガーのおいしい国へ行く前にこんなもの食べる必要は全くなかったのだ)、ミネラル・ウォーターを買い、いざ、出国審査へ。
『ピーッ』
リュックがひっかかっる。ご存知の通り、テロ以降、さらにハイテクになったX線。有無を言わさず中身を調べられる。
ハラハラハラ・・・・・・。何も悪いことをしているわけじゃないけれど、私のリュックの中には遺骨が入っている。
父は金歯を入れていただろうか? 不安になる。火葬の際、燃えなかった金の破片なんぞが反応しているのではあるまいか。
「これは何ですか?」
巾着に包まれた父の遺骨に触れて違和感を感じたのだろう、検査官が聞く。
「あのう、遺骨なんです」
「あ、そうですか」
あっけなく納得する検査官。ほっ。結局犯人はデジカメであった。やれやれ。
DFSでいつもの煙草を買い求め、時間潰しに20分ほどインターネットで遊び、搭乗開始とともに、私はゲートに向かった。サービスの新聞か雑誌をゲットするためだ。ところが、搭乗口を目前に、私は呼びとめられてしまった。
「ここに座って下さい」
と、女性警備員。 椅子に座ると靴を脱がされ、足の裏までチェックされる。その間、もう一人が鞄の中を漁る。他の人は、というと、そんな私を横目で見ながらすいすいと通りすぎ、搭乗し始めているではないか!
たまらずに私は訊いた。
「あの、これは一体どういった基準で調べているんですか?」
「ランダムです」
なんどすて? だからって、なんで私? 隣で調べられているおじいさんも一人旅らしい。
ぶらっと一人で搭乗口に向かっている、あまり反抗しそうにない人間を狙っているに違いない。
リュックを調べていた女性が例の巾着に気がついた。当たり前のように紐をほどこうとしている。
「それに触らないで!」と叫びたい気持ちを抑えて、急いで靴を履き、遺骨であることを告げると、ようやく手を止めた。
「はい、ご協力ありがとうございました」
ありがとうもくそもあるか! どうして一人孤独に旅立とうとしている時に、何よりも大事な遺骨を抱えている時に限ってこんな目にあわなければならないのか。
だいたい全員調べるのでなければこんな検査は全く意味がないじゃないか。おそらくは警告というより脅しに近いデモンストレーションみたいなものだろう。
変なデモのおかげさまで善良な一搭乗者の私は雑誌を取り損ね、しばらくは腹の虫が治まらなかった。
しかれどもあと数時間もすればハワイの乾いた風が迎えてくれるのだ、おいしくビールを飲んで、寝よ。
それにしても手荷物の検査官も警備員も全員女性というのは敵も考えたものである。これが男性で、女性客の荷物の中にタ○ポ○なんぞを見つけてしまった日には大騒ぎだろう。
さて、不愉快なことは忘れよう。でも、でもである。乾いた風の前に日本よりも厳重体制となったアメリカ入国審査がある。遺骨を麻薬と間違えられて拘束されたなどという恐ろしい話しも聞いているので、安心してもいられない。ああどうか、無事にくぐり抜けられますようにと、祈りながら私は眠りについたのでした。
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