ハラハラ荷物検査〜ホノルル編



 朝食のサービスにすら気づぬほど、珍しく機内でぐっすりと眠れた。これからは旅行直前にはあえてハード・スケジュールを入れておくのが よいかもしれない。目を覚ませばもうハワイである。
 惚れ惚れするような陽射しが降り注ぐ中、ウィキウィキ・バスに乗り、到着ターミナルへ向かう。
 入国審査官はロコっぽいおじさん。なぜかその横にもう一人若い女性がついている。
「滞在の目的は?」「日数は?」とお決まりの質問の後、
「帰りの航空券を見せて下さい」
 チケットといっても、今回はNWのE-チケットなので、自宅のPCからプリントアウトしたA4用紙である。
 一瞬、ロコおじさんが眉をひそめると、すかさず隣の女性が
「インターネット・チケットですよ」
 このご時世、珍しいものでもないだろうに、ロコおじさん、初めてお目にかかったらしい。 おっさんに見えるけど案外若くて、新人さんなのかもしれない。
 ロコおじさん:「一人できたんですか?」
 私:「はい」
 すると隣の女性、
「ナンデヒトリ?」
 大きなお世話である。(だいだい、ナンデそこだけ日本語なのだ?!)
 一人でハワイに降り立つ旅行客なんぞ、それこそ一日何十人もいるはずなのに。
 散骨云々と、正直に話すのも面倒なので、 「友達に会いに来た」 と言う。
 おおいに納得したらしく、これにて放免。
 最後に問題の税関。過去10回のアメリカ入国の際、荷物を引っくり返されたことは一度もない。 けれどもこの国はまさしくイラク戦争へ向けて秒読み段階に入っているところである。リュックの中まで覗かれて、遺骨に気づかれたらどうしよう。火葬が中心の日本なら、話は早いけれど、理解されてもらえずに、麻薬と間違えちゃったりしたら・・・・・・。
 と、これらは全て取り越し苦労だった。飛行機を『降り』さえすればあまり深刻な問題ではないらしい。毎度のごとく、税関ではパスポートを見せ、入国審査と似たり寄ったりの質問をされるだけである。ところが、私のパスポートを見ていた税関士は、懐疑心に満ちた目を向けてこう尋ねた。
「何度もマレーシアに行っているようだけど、なぜ?」
 これも大きなお世話である。
「マレーシアが好きだからです」
 私は正直に答えた。だって、あの国にはこんないぢわるな質問する人間はいないもの。
「何をしに?」と 聞かれたらそう付け加えてやろうかと思っていたけれど、あっさりと解放してくれた。
 さてさて、ようやく空港の外に出た私はハワイの空気を胸一杯に吸い込む。空は青く、風は暖かく、そして太陽の光はいつもの通り眩い。
 ここがあと数日で戦争が始まるというアメリカと同じ国だなんて、とても信じられない気持ちで、まずは数時間ぶりの煙草に火をつけたのでした。



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