* 猫の嫁入り −その2− * 



 母は、まだあきらめきれなかった。息子同様に愛するペペの子供が、どうしても欲しかったのだ。今度こそ、とやってきたペペの新しいお嫁さん『リコ』。ペペと同じ色のブルー・ペルシャである。
 ほどなく、リコもさかりを迎えた。ウミャウミャウミャとペペに擦り寄っていく。が、ペペは何の反応も見せない。リコが鳴こうがわめこうが、知ったこっちゃない、てな感じである。これは一体、どうしたことか?
 その頃から、ペペは外を放浪するようになった。夕食を終えると出かけてしまうのである。ご近所に何匹か愛人がいたらしく、彼女たちとの逢瀬を楽しんでいたのだ。
「リコちゃんが気に入らないのかな」
 と、母は落胆のため息を漏らす。
 私は言えなかった。あの『引き剥がし作戦』のことを。
 ペペはきっとうんざりしたのだろう。我が家では落ち着いて事に及ぶことなどできやしない。だったら、せいぜい外で遊んでやろうと心決めたのに違いないのだ。
 そして欲情をもてあましたリコは、なんと兄に擦り寄り始めたのである。去勢するまで、リコは日々兄を追い掛け回した。本当にペペにもリコにもアミにも、悪いことをしてしまった。
 それにしても「据え膳食わぬは男の恥」と豪語する人間の男と違って、ペペはなんともクールでかっこいい猫ではないか。
 え? 元はと言えばお前のせいだって? 返す言葉もございません(反省)。





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