Pulau Redang, MALAYSIA
- レダン島'04〜トラブルの泉   -




催行会社、現地手配会社、ともに出来得る限り、最善の対処をしてくれたと思うので、正直、もう怒ってはいない。けれど、パッケージ・ツアーの落とし穴は、こんなところにも潜んでいるのだということを、是非知っていただきたいと思い、こんな形でレポートを始めることになってしまいました。
結局ベルジャヤに移って大正解だったので、良かったのだけれど、今となっては、去年オープンしたばかりで、まだ慣れていないという点を差し引いてもお粗末過ぎるリゾートのサーヴィスだけが心残り。
この出来たばかりで情報の少ないリゾートの様子を皆様にお知らせするのを楽しみにしていただけに残念ですが、まあ、こういうこともあるんだなあと、軽い気持ちで読んでみて下さい。ちょっと長いけど……。

■ 登場人物 ■ 

ABCホリデーズ:今回の旅行の催行会社。大手ではないけれど、わりと良く聞く名前。
XYZツアー:現地手配会社
吉井氏(仮名):現地係員。
大川氏(仮名):XYZツアーの責任者
土田さん(仮名):ABCホリデーズのスタッフ。結構いい人。

−理由−

なかなか夏休みがとれなかった亭主が今年は一緒に行けるということがわかったのは、毎年恒例となっている友人との旅行が決定した直後。この時期だったら、やはりマレーシアの東海岸。亭主はまだ訪れたことのないので、是非あの美しさを知って欲しいと思い、お酒のサーヴィス状況を吟味した上で、レダン島に決定。
リゾートは出来たばかりのラグーナ・レダン。ラブーナを選んだのは、大きなプールがあること、新しいので水周りの状態も良さそうなこと、設備も申し分ないこと、そして何より同じパシール・パンジャンに建つ、懐かしいコーラル・レダンまで歩いて遊びに行けることが一番大きな理由だった。
部屋は、悩んだ末デラックス・プール・ヴュー
手配も全て完了し、テラスを開ければすぐにプールの水飛沫を眺められる日を、楽しみに待つだけになりました。


−予兆−

前泊したクアラトレンガヌのストラ・ビーチ・リゾートの車でメラン港に到着し、早速ラグーナのチェックイン・ポイントへ向かうと、そこには既に大勢のゲスト。その殆どがひとつの団体旅行のご一行だと気づき、暗澹たる気分になる。どこのお国だろうが、団体となると節操がなくなるのは変わらない。
案の定、出航の際にも、当然のように列を無視して私たちを追い越し、ぎゃあぎゃあ、わいわいと我先にとボートへ乗り込んでゆく。
やれやれ、先が思いやられるな、と、この時の不安が、その後、見事に適中することになるとは、考えてもいなかった。
1時間の船の旅が終わり、ラグーナ・レダンのジェティに下り立つと、そこには樹木が切り倒された赤土色の地が広がり、ダイビング・ショップだけが港に向けてポツンと建っているだけ。そのうち、色んな施設が建てられていくのだろう。
さて、ボートはともかく、チェックインとなると、先を越されるわけにはいかない。団体ともなると、部屋割り云々で揉めることが予想されるので、一番乗りでレセプションに駆けつける。すると、
「ここじゃない。あっち」
フロント・スタッフがロビーの片隅にある仮設カウンターを指差す。
そちらへ行って、簡単な説明を受けチェックアウトの日の確認をするのだけれど、ここで、最初の問題が発生するのです。


−困惑−

まず、出発の数日前にトレンガヌ→KLの便が早い時間のものに変わったのだけど、ホテル側には連絡されていなかったこと、そして部屋は11:30にならないと空かないので、しばらく待機してくれとのこと。まあ、それらはたいしたことではないので良いとしたけれど、チェックアウトは12:00と聞いていたのに、10:30だという。ABCホリデーズからの最終案内にも書いてあるので、そう訴えても全く取り合ってくれない。これは後で現地係員に電話してみることにして、とりあえず部屋に入れるまでの1時間弱、ロビーにあるカウンター・バーで暇を潰すことにする。バーからは見覚えのあるビーチが見渡せて、2年前、コーラル・レダンのスタッフに案内されてシュノーケリングを楽しんだ岩場は、家族連れで賑わっている。早く水着に着替えて泳ぎたい気持ちを抑えてただ時間の過ぎるのを待つ。そして、ようやく11:30。レセプションへ行ってみると、
「まだ掃除が終わっていない。荷物だけは置ける」
とのこと。
釈然としないけれど、着替えくらいは出来るだろうと鍵を受け取り、次のリアクションを待っていると、スタッフは他のゲストの応対にとりかかり、電話に出たりと、私たちの存在をすでに忘れているようだ。荷物は? 自分で運べということなのか? しかもリゾートの案内図すら貰っていないのに、どうやって部屋まで辿り着けばいいというのか!?
「あの、部屋はどこですか?」
と聞くと、
「ぐるっと回って、あっち」
と、非常にアバウトな答え。
あっちと言われた方に回ってみるとポーターがいたのでトランクを預けようとしたのだけれど、次のボートで帰るゲストの荷物運びに余念がなく、こちらも私たちの存在などまるで無視。時間がもったいないので、自分たちで運ぶことにする。
プールは広く、見ているだけで気持ちが良い。プール・サイドには人も少なく、これは楽しめそうだなと、うきうきしながらようやく自分たちの部屋のある棟を見つけ、トランクを転がしてゆく……と、ある法則に気づき、とんでもない不安が襲ってくる。プールに面している部屋は奇数号室。そして私たち偶数号室は案の定、プールに背を向けて作られている! 部屋に入り、テラスを開けてみると、そこにはジェティの周囲と同じく、殺伐とした赤土色の野原が広がっているだけ。
これの一体どこがデラックス・プール・ヴューなのか!?!?
早速、現地係員に電話を入れてみる。が、外線がうんともすんとも言わない。
フロントに訴えてみると、調べてみるからしばし待てとのこと。10分待っても連絡がないので、オペレーターにかけ、繋げてもらおうとすると
「外線は"9"を押して…」
だからその"9"が使えないから頼んでいるんだ!
と訴えてようやく現地係員、吉井氏に辿り着く。
とりあえず、現況を説明。

プール・ヴューではないこと
チェックアウトが12:00ではなく、10:30であること
まだ掃除が終わっておらず、タオルやペットボトルが散乱していること
部屋までの案内もなく、荷物を自分たちで運んだこと


以上のことを訴えると、調べて連絡する、という。
とにかく、こんな風にして、壮絶なバトルの幕が上がったのです。
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−交渉−

10分ほどたってようやく返答。
まず、チェックアウトの件は現地手配会社のミスで12:00となっているけれど、実は10:30であり、これはうちだけではなく、ツアー客共通であること。
部屋はROH(run of house)というカテゴリーで、運良くプール・ヴューがあいていればそちらへ移れるというもので、どうしてもプール・ヴューに移りたいのであれば、追加料金が必要であるとのこと。冗談ではない。私たちはプール・ヴューの部屋に値する金額を既に払い込んでいるのだから、追加料金なんぞ支払う義務は全くない。チェックアウトはともかく、すぐにプール・ヴューへ移すよう依頼して電話を切る。
しばらくして吉井氏から2度目の連絡。
「プール・ヴューはいっぱいだそうです」
だったら、どうにか代案を出すべきだろう。おまけに暑くなってきたのでエアコンをつけようとしたら、電気が通っていないことに気づいて、これもすぐに治すようホテル側に伝えてくれと言って切る。
ただ、もしかしたら私の勘違いかもしれないと不安になり、ABCホリデーズへ国際電話をかける(フロントからは何の連絡もなかったけれど、外線がいつのまにか通じていた)。この時、担当者が不在だったが為に、たまたま電話を取ってしまった不運な土田さんがこの後、すべての連絡係りとなってしまう。
確認したところ、間違いなくプール・ヴューで申し込んである。とにかく吉井氏からの連絡を待つしかないのに、ちっともかかってこないので、再度こちらから電話。まだ何の代案も浮かばないようで、ふたことめには現地手配会社が…云々と言い訳を述べる。私たちは一体、どうすればいいのか。ようやく掃除は入ったものの、エアコンもつかない部屋の中で、荷物を解く事もできず、いつまで悶々としていればいいのか? お昼前には海へ飛び込んでいる予定が、既に大幅に狂っている。
次の電話でようやく最初の代案。
部屋は今日・明日だけはこのままで、3、4日目からスイートにしてくれるという。プール・ヴュー4泊と野っ原ヴュー2泊+スイート2泊。どちらが得かと言えば、後者かもしれない。でも、すでに午後3時が近づいている。欧米人のように、2週間も3週間も休暇がとれるならばともかく、平均的な日本のサラリーマンがとれる一週間の夏休み。しかもこのアクセスの悪い島に至ってはギリギリの4泊のうちの半分なのだ。そう考えると、やっぱり納得がいかない。部屋の問題はもちろん、この1日も保証してくれるのかどうか、ちゃんと答えを聞けないのならABCホリデーズへ訴えると言うと、
「それはちょっと勘弁して下さい」
と泣きに入ってしまう。いい大人がなんてことだろう。毎度毎度、最後には「そんなこと言われましても…」「すみません。勘弁して下さい」と逃げ口上ばかり。
とにかくこちらの条件としては、

今日一日の宿泊代を返金すること
今日は我慢するとしても、明日からスイートにアップグレードすること
この交渉にかかった電話代は全て支払ってもらうこと


をつきつけた。もう、これ以上は待てないし、条件は譲らない、と。
そしてまた待つこと10分。次の電話。部屋はまだ交渉中だけれど、現地手配会社の東京支社とABCホリデーズの間で返金については話はついた、とのこと。だったらABCホリデーズの誰と話をしたのだと聞くと、それは言えないのだそう。何で名前くらい言えないのか、それでは日本へ帰ってから誰と交渉すればいいのか、マレーシアまでわざわざ国際電話をかけろというのか。おかしいじゃないか。とにかく、さっきから何度も口にしている、その現地手配会社というのは、一体、どこなんだ、会社名くらい教えろというと、もぞもぞと「 XYZツアーです」とようやく名前を口にする。


−発覚−

この人はあまりあてにならない、と判断し、ABCホリデーズへ再び電話。コーラル・レダンでいいので、すぐに移れないかと聞いてみる。設備もランクも下がるけれど、こんなにサーヴィスの悪いホテルにいるよりずっといいし、ランクアップしたいがために、いちゃもんをつけていると思われるのも癪だからだ。コーラル・レダンの名を口にした途端、船を下りた瞬間からにこやかに出迎えてくれたスタッフたちを思い出し、涙が出てきそうになった。
そしてこの電話で、ひょんなことから、新事実が発覚する。現地係員・吉井氏の正体が明らかになったのだ。驚いたことに、彼は他でもない、現地手配会社XYZツアーの社員だったのだ! だったら、なぜ初めからそう言わない? こちらはてっきりXYZツアーから嘱託された個人の業者だとばかり思っていたのだ。最初の電話から「当社のミス」と認め、すぐに上司に連絡をとるなりして対策を考えてくれさえすれば、こんなに時間を無駄にせずとも済んだのに。
いいかげんな現地手配会社のおかげでトラブルに巻き込まれた可哀想な現地係員を押し通すつもりだったのか。責任の所在をあやふやにして、あきらめさせるつもりだったのか。そして、この手を使って、これまで、どれだけの旅行者を泣き寝入りさせてきたのか。
このことを知った瞬間、私たちの怒りは、もう頂点に達した。


−憤慨−

ABCホリデーズにもう吉井氏とは話をしたくないと訴えると、XYZツアーの責任者から謝罪の電話がかかってくる手筈になっている、とのこと。ところが待てど暮せど、かかってはこない。仕方なくもう一度吉井氏の携帯に連絡(これしか方法がないのだ)。今までは苛立ってはいても、なるべく気持ちを抑えて話していたけれど、もう遠慮はしない。早く上司に代われと言うと、すぐに責任者の大川氏が出た。これまでの吉井氏との交渉状況を訴え、どうしてくれるのかと詰め寄る。とにかく他のホテルをあたってみるので、10分後にかけ直すという。もう待つのはうんざりなので、とりあえず、5分後にも一度中間報告をするように、と念を押し、電話を切って待つ。
こちらの怒りが尋常ではないことを察知したのか、結果、XYZツアーが出した代案は以下の通り。

ベルジャヤへ移動。今日はデラックス、明日から3泊はスイートへアップグレード。
ボートの手配、今日一日の電話代もXYZツアーで保証する。
返金については必ず明日中に連絡を入れる。


あと、こちらからの条件として、必ずポーターに荷物を運ばせるよう依頼。

以上でようやく和解。時は既に午後4時! 吉井氏が責任逃れをせずに、はじめからこの人と話ができればもっと早くかたはついたのに。とうとう1日を潰してしまった。


−移動−

ボートは4:30に手配できたというのでトランクの鍵を閉め、ポーターを待つ。まあ、予想はしていたけれど、やってこないので、もう面倒なので直接フロントに電話。
「ポーターをお願いします」と言うと、今、手が空いていないとかなんとか。
「これから、ベルジャヤに移るんです(怒)」
「わかってます。but…」
もう、言い訳は聞かない。

「つべこべ言わずに、とっとと来やがれ!!」

と捲し立てたら、ほどなく到着。ほらみなさい。やれば出来るんじゃないの。今まで、一体誰を、何を優先した結果、これだけ嫌な思いをさせられることになったのか。いくらオープンしたばかりでスタッフも慣れていないとはいえ、あまりにも手際が悪すぎる。ついでに言うと、吉井氏に電気が通っていないことを伝えてからメンテナンスがやってくるまでにも40分もかかった。もうこのリゾートに滞在しなくてもすむと思うと、本当にせいせいした。
外に出ると、すでに太陽が傾き始めている。まだまだ遊び足りない子供たちがはしゃぐ姿や部屋へ戻る準備を始めるゲストの様子が目に入る。本当なら今頃、少し陽に焼けた肌をさすりながら、そろそろハッピー・アワーかなと、話し合っているはずだったのに。嘆いたところで時間が盆にのって帰ってくるわけでもないので、もう嫌な事は忘れてベルジャヤに期待を馳せることにした。そして午後4時20分。ラグーナ・レダンをチェックアウト。部屋に入れるまでの待ち時間を含め、滞在時間たったの5時間。その殆どをベッドサイドの電話機の傍で、昼食をとることも出来ず、過ごしてしまった。
約束通り4:30きっかりにボートにてリゾートを後にする。10分ほど水上を走り、ようやくボートがベルジャヤの建つ入り江に入ると、懐かしいベージュ色の屋根とのっぽの椰子の木々が目に飛び込み、ようやく安堵のため息をついたのでした。


−勝利−

デラックスの部屋に通されたとはいえ、翌日にはスイートに移れるはずなので、荷物を広げることもできない。結局、怒り疲れでその日は早々に寝てしまう。
翌朝、スイートに移る時間を確認しようとレセプションへ行くと、ちょうど大川氏から電話が入る。お昼過ぎには空くとのことだけれど、午後にはダイビングを申し込んである。何度も言うけれど待つのはたくさんなので、時間を確約して欲しいと言うと、スタッフと交渉の結果、午後1時に鍵を取替えにきてさえくれれば、荷物もポーターが運んでくれるという。このへんの手際の良さはラグーナではとても想像できない。その後、ABCホリデーズとも話し合いがついたようで、一人につき\10,000を返金する旨が謝罪の言葉とともに、FAXで送られてきた。
スイートの様子については、次ページで紹介させていただくとして、これにて、一件落着。そして4年ぶりのベルジャヤ滞在は、予想以上に素晴らしい日々で、かなり満足。
もし、皆さんもこんなトラブルに巻き込まれたなら、絶対に弱気になってはいけません。こちらに非がなければ、とことん交渉しましょう。とはいっても私たちの場合は弁のたつ亭主が理論詰めで徹底的に攻撃したのが勝因なのですが(笑)……。最後に言わせてもらうと、ラグーナで、いつもいつもマレーシアを訪れるたびに感じていたこの国の人々の温かさ、スタッフの心からの笑顔を一瞬でも垣間見ることができたならば、正直、ここまで怒ってはいなかったな、とも思う。
以上でレダン島移動物語は終わりです。さて、やなこたあとっとと忘れて、滞在記にまいりましょう!


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