TANJONG JARA RESORT 
(Kuala Terengganu, Malaysia)



静かなビーチなれど、
この日はちょっと遊泳には
向いていないよう。
小さな白波が所々に顔を覗かせるのは、
時化ている証拠。
泳いでいるゲストはいない。

今日は海を諦め、
プールサイドでのんびり寛ごう。
まるで海に落ちていくような
デザインの大きなプール。

デッキチェアにはあらかじめ、
ビーチ・タオルが用意されていて、
ゲストがやって来ると、
どこからかスタッフが現れて、
セッテングしてくれる。
手足を伸ばして横たわると、
冷たい水が目の前に。
こまやかな気配りがうれしい。



 時間を間違えたかな、と思った。
 ハッピー・アワーのはずのプール・サイド・バーには
 1人のゲストの姿もなく、バーテンダーが黙々と
 グラスを磨いているだけ。
 ああ、そうか。
 すぐに納得して椅子をひく。
 このリゾートには、半額のビールを求めて、
 ここぞとばかりに押しかけるような貧乏性のゲストは
 少ないのだ。
 私達の出現に驚いた猿が慌てて
 木々の中に姿を消す。このバーの人気者、九官鳥の 
 餌を失敬していたよう。
 「機嫌がいいとしゃべるんだけどね」
 と、スタッフが新しい餌を籠に差し入れる。
 餌は新鮮なフルーツだ。
 「日本の雑誌を持ってきていない?」
 ビールを注ぎながら彼が聞く。
 残念ながら持ってきたのは文庫本の小説だけ。
 「日本のコメディアンに似てるって言われるんだ。えーと、 
 何ていったけ・・・」
 「岡村?!」
 そう、それ! 満場一致で笑いがこぼれる。
 マレーシアの、特に東海岸でこのての顔をよく見る、
 と他のレポートでも書いたけれど、
 ここにもちゃんと1人居た、というわけだ。
 オカムラ話ですっかり打ち解けた頃、
 機嫌の直った九官鳥が突然、「ハロー!」
 続いて、「ニャオ」
 聞き取れないほど流暢な発音でマレーシア語の
 挨拶まで。
 ここでは動物達ですら、ゲストを快くもてなしてくれる。





陽が落ちると、タンジョンジャラはもうひとつの顔を見せ始める。
ライト・アップされたリゾート内はどこに眼を向けても幻想的。
真昼の眩しさとは対照的な、闇を彩る艶かしい光。
耳を澄ませば、聞こえてくるのは、風の音と、微かな鳥の鳴き声だけ。







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